007/慰めの報酬(2008)/★★★★
007フォーマットに忠実な作品
DVD買いに行ったらBDの方が安かった『慰めの報酬』です。
ダニエル=ボンド3作の中では一番評価の低い本作ですが、私は意外と楽しめました。
これがシリーズ中一番ロケの多い作品とか。
確かに砂漠と南米の風景しか印象にないのですが、あちこち場所を変えてはアクションをしています。
序盤のカーチェイスに始まって、街の屋根を駆ける追跡シーン、ボートアクション、飛行機アクション、ホテルの爆破アクションなどなど。
ありとあらゆるアクションが詰め込まれ堪能できます。
さらに、ここ3作の中では本作が一番ボンド映画であることを感じさせてくれます。
その理由として、砂漠を歩くボンドとカミーユ(オルガ・キュリレンコ)の姿が『私を愛したスパイ』のボンド(ロジャー・ムーア)とアマソワ少佐(バーバラ・バック)のエジプトをさすらうシーンとかぶって見えることと、ラストに大爆破シーンが用意されていることでしょう。
おそらく私が『スカイフォール』に物足りなさを感じたのは、最後の敵基地の爆破シーンがなかったからではないかと気づきました。
私が考えるボンド映画とは、いつも知ったかぶっているが実は弱っちいスパイ(ボンド)が、しつこくしつこく敵の邪魔をし、そのうちに捕まって「しつこい奴だ」と罵られ、拷問されそうになるが、間一髪で抜け出して敵の基地をめちゃくちゃにする。というフォーマット(お約束)の上に成り立って展開されるものであります。
ボンドは建設的なことは一切行いません。
行く先々で女といちゃつくか、何かを壊すことしかしません。いつも気取っていて知識をひけらかしますが力は弱く、困るとすぐに友人を頼ったりします。(その友人がトラブルに巻き込まれて死んだりすることも多い)
そのくせ人の邪魔をするのだけは大得意というキャラクタであります。
このキャラクタはショーン・コネリー、ロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンと歴代ボンドに引き継がれ、ティモシー・ダルトンやジョージ・レイゼンビーにすらその困ったチャンぶりは引き継がれてきました。
ダニエル・クレイグはそこが違うんですよねぇ。真面目すぎて。
もっと弱くていいんです。もっとスカした奴がいい。
『ゴールド・フィンガー』で確立された本フォーマットは50年間脈々と受け継がれてきました。
そして、このフォーマットに一番近いのが本作で、一番遠いのが『スカイフォール』ということになると思います。
ただ、映画の質という意味では、カジノロワイヤル>スカイフォール>>>>慰めの報酬 というところが悩ましい。
さて、本作で片鱗をうかがわせた究極の悪の組織。次回作までにはぜひ巨大な秘密基地を建設した上でボンドに破壊させて欲しいと思います。
頼むぞ!悪の巨大組織。