ウォーターワールド(1995)/★★★★★
私は好きだなぁ
古くてすみません。
1995年の作品で、当時のコスナーバッシングと共に大金をかけた割には内容がイマイチとの評判のトンデモ超大作として紹介されることが多く、私も最初に見たときにそう思いました。
それで終わればタダのB級なんでしょうが、なぜかまた見たくなるんですね。それで私なりにこの映画のどこが良いのか書いてみました。
1.アクションの質が高い
まず、ケヴィン・コスナーが「両生人間」(えら呼吸が長く水にもぐることができ、手と足に水かきがあるという設定)に合わせたアクションを展開している素晴らしい。特に特殊改造されたヨット上ではサル並みの身軽さで縦横無尽に動きまわる姿は一見の価値ありです。さらにマストの上り下りはかつての海賊映画を感じさせますね。
主なアクション場面
- 最初のスモーカーに襲われたコロニーから脱出するところ。
水上から飛び出すシーンが有名ですが、まるで未来少年コナン並みの身体能力を持つことがわかる場面でもあります。
- スモーカーの罠を見破って逃げ出すところ。
ヨット対飛行機のアクションなんてこの映画ぐらいじゃないでしょうか?かなり長いシークエンスになっています。また左右の胴を持ち上げて網を抜ける技はヨットアクションの白眉!かなり「燃える」出来になっています。
- タンカーでの戦い。
ダイハード2の影響が色濃く出ていますが、なんせディーコン(敵のボス)がデニス・ホッパーですから。どうにも間抜けなのがトホホです。
実はこの映画、本編よりもユニバーサル・スタジオのアトラクションの方が有名です。私も以前ロサンゼルスで観たことがありますが、パーク内に作られた水上セットをジェットスキーやボートが走り回るアトラクションで、とても楽しいショーでした。なお、同様のものがUSJでも見られるようです。
2.その世界観がすごい
オープニング。自らの小便をろ過して飲み水と栽培用の鉢植えに与えるシーンから、その裏に隠された膨大な世界観が垣間見えます。
同じように世紀末を描いてた「マッドマックス2」とよく似ていますが、こちらは"水上"である分だけ、よく練られており、舞台や大道具、小道具、衣装がその世界観を支えています。
まず、人々はボロを着て水は貴重品。さらに「土」は「水」と等価で取引されます。実をつける植物も貴重品。貧しさは人間不信を生み、隙をみては相手の持ち物を盗み、言葉巧みに罠にはめようとするものが後を絶ちません。
人間以外にも両生類(ミュータント)もいますし、狭い領域に暮らすので近親相姦による奇形もあります。
幻の水のない土地(=トライランド)という伝説があり、そこからきたとされる女の子がいますが、人々は信用していません。
(さらにこの子の背中にはドライランドへの地図が彫られてるという噂もささやかれています)
※この噂が原因でマリナー(ケヴィン・コスナー)とディーコン(デニス・ホッパー)との確執になっていきます。
そのほかタンカーの底で油を監視して暮らす老人や死体を燃料化(「リサイクル」)もします。
人々は知りませんが、実はかつて発達した文明があり、その都市は海底に眠っています。沈没したビルの谷間には潜水艦すら見て取れます。
人々の移動は小さなボートで行いますが、そのほかにジェットスキーやプロペラ機、飛行船なども使います。
この世界観を作り上げたのは、脚本のピーター・レイダーとデヴィッド・トゥーヒー。特にトゥーヒーは「逃亡者」や「アライバル-侵略者-」最近では「ピッチブラック」とその続編「リディック」などで独特の世界観を作り上げることに定評のある脚本家です。
さらに、もう一人の主人公とも言えるマリナーの船には仕掛けがいっぱい。アナログですが007並みの秘密装備とそれらを使いこなすマリナーの姿がこの世界をリアルに見せています。
3.音楽がすごい
クレジットはジェームズ・ニュートン・ハワードですが、IMdbによると実際にはマーク・アイシャムだそうで、allcinemaでもマーク・アイシャムとなっています。私もサントラを買いましたが、なんといっても17曲目の「ディーコンの演説」が燃えます。作中ではあまり聞こえないのですが、ショーでは開始前にこの音楽がガンガンかかってもう待ちきれないって感じです。
ちなみに、この曲はTVの「あるある系番組」でもBGMとしてよくかるスタンダード。この曲を聴くと
「普段は健康に欠かせないこの善玉菌がこの物質に反応し、なんと悪玉菌に変身してしまうのだ!」
みたいなナレーションが頭にうかぶでしょう。
また、1曲目の「メイン・タイトル」のなんと壮大なこと。かつてのジェリー・ゴールド・スミスを彷彿とさせるホーンの使い方ですね。これは燃えます!。
なお、こちらで一部を視聴することができます。
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4.映像がすごい。
印象的な絵がいくつもあります。
大きな月をバックに夜の海を航海するシーンを筆頭に、美しい水中シーン(本当に水が綺麗)、コロニーのセット、ドライランドの滝などなど。
全編水上シーンですが単調にならず、飽きさせません。撮影は「マッドマックス2」のディーン・セムラー。どうりで似ているわけです。
5.キャラクタがすごい
ミュータントであることを隠して旅をする無口な男マリナー(ケヴィン・コスナー)。誰も信用せず一匹狼で旅をしますが、縁あってコロニーで知り合った酒場女(ジーン・トリプルホーン)とその子供が連れになります。
ジーンが道連れにしてもらう代わりにと裸になるシーンは、代役とわかっていてもドキドキします。
実はこの連れの女の子が例の伝説の土地からきた女の子なわけですが、いたずら好きで絵を書くのが大好き。
マリナーが持っていたチョーク(クレヨン?)で船のあちこちに落書きをしてまわってはマリナーをいらつかせます。ところが、その絵が鍵となって少女が本物であることをマリナーは知ります。
最初は冷たく当たるマリナーですが、段々と親しくなっていき、やがて家族のようにまとまっていく姿がじっくり描かれているのは好感がもてます。
なお、途中でへまをしたジーンに当たり散らして髪を切るシーンは、ペーソスがあって私の大好きなシーンです。
6.でもマヌケ。
自分をえさにして大魚を釣る場面がいかにもトホホですが、それ以外にも間違ってボスを打ってしまう部下やタンカーの中で車を飛ばしたりゴルフをするのもオマヌケ。さらに勝手に上がってしまう飛行船もマヌケです。
でもクライマックスで自爆するあたりがマヌケの最たるもの。
このあたりが評価の分かれ目になっているようです。
7.結局「ウォーターワールド」とはなんだったのか?
どんなに素晴らしい世界観やアクションがあっても、135分はさすがに長い。
ただし、こうしてみると確かにカットするところがないことにも気づきます。問題があるとすれば、終盤のド派手アクションの展開でしょう。
監督は「ファンダンゴ」や「 ロビン・フッド」でコスナーと組んだケヴィン・レイノルズですが、ケヴィン・コスナー自身が監督も兼任しているようです。プロデュースも兼ねた本作では、こだわりぬいたセットも含め1億7500万ドルの制作費が投じられた超大作ですが、蓋を開けたら大コケとの評判でした。
これを境にコスナーの人気は凋落し、これ以降ヒット作に恵まれていません。最新作は「海猿」のパクリ?の「守護神」。これも当たりそうにないですね。
ただ、今みると当時とはずいぶんと違った印象も持ちます。もっと評価されてもいいのでは?