007 スカイフォール(2012)/★★★★☆

007ってこんな映画だっけ?

映画の日に封切という太っ腹な決断に便乗して初日の1回目を観てきました。
場所は品川プリンスシネマのシアターZERO。
客席数は273と多くないものの、とにかくスクリーンがデカい。さらにスタジアム形式で傾斜が急なので前の人が全く気になりません。
スクリーンとの距離も近く座席も広いため、まるで巨大なプライベートシアターの気分が味わえて、私の大好きな劇場です。


いきなりアノ旋律が響いて影から現れるクレイグ・ボンド。いつものアバンタイトルと思いきやストーリー自体がドンドン進んでいき、いつまでも終わらない。
それも予告で観たあの場面、この場面が流れて、えっここでやっちゃうの?これもやっちゃうんだ!ちょっ、おまっ。
もう全然先の読めない展開にアドレナリン出まくり出しまくり。
そして衝撃の展開(これは予告で知ってましたけど)とともに、オープニングナンバーが始まります。
あまりの気持ちよさに死ぬかと思いましたよ。マジで。


一転、MI6に舞台は移るのですが、暗くて雨のシーンばかりのサム・メンデス演出。
ロード・トゥ・パーディション」でも雨が効果的に使われていました。
007映画とは思えない重厚な演出で演じるのはジュディ・デンチ
「やっぱ007はイギリス映画だった!」と思いきやMI6の爆破ですよ。
ダークナイトライジング」で感じたんですが、遠景の爆破シーンってそのスペクタル性の割に意外と劇場で見たときのインパクトがないんですよね。
でもこれは違いました。その秘密は音ですね。
劇場にもよるんでしょうが、爆風が感じられそうな重低音。わかっていてもビックリしました。


ボンドの体に残った残弾から犯人が上海にいることがわかり一路上海へ。
この上海でのイルミネーションをバックにした射撃シーンはとにかくスタリッシュ。
かつての「ロシアより愛をこめて」とか「ゴールド・フィンガー」の女性の体に文字を映すタイトルバックを思い出しました。
こういったスタリッシュさ、洒脱さも007映画の醍醐味ですね。
そしてマカオのカジノ(これは「カジノロワイヤル」のオマージュもあるのでしょう)から敵の本拠地(軍艦島)に乗り込むところで捕えられます。
やはりボンドは捕まってナンボですからね。


そして敵ボス登場。
今回の敵はなんと元諜報員でしかもMの元部下。
公務ではなく私憤の戦いといえば「消されたライセンス」が一番近い気がします。
ここで死神=シガーことハビエル・バルデムがネズミの話をしならが登場するんですが、長台詞&1カット&カメラほぼ固定。
007映画でこんな敵役の登場は見たことないです。
役者の魅力を全面に押し出したサム・メンデス演出。隅に置けません。


ここでやっと半分なんですが、実はここから映画は一気に陳腐化し始めます。
まずボンドガールが退場。(以降はなんとMがボンドガール?!)
さらに死神=シガーはガラスケースに入れられて投獄。ハンニバル=バルデムとなりました。さらにさらに予定通り脱獄し、今度はジョーカー=バルデムとなってMを付け狙うのです。(ダークナイト風)
クレイグ・ボンドはQの助けを借りてバルデムを追跡します(M:I風)
ジョーカー=バルデムは地下鉄をさらに地下に落とすのでした(ダイ・ハード風)
Mを殺すために公聴会に乗り込んだりもするのですが、まんまと逃げられます。


クレイグ・ボンドはもうだれも信用できないと、アストン・マーチンに乗り換えて今は廃屋となった自分の実家に連れて行きます。
なんか、最近こんな映画みたなと思ったら「トゥモロー・ワールド」でした。
「トゥモロー・・・」は父親が存命だったので実家感があったのですが、こちらは無人の廃墟。管理人(アルバート・フィニー)はいるけど007映画とは関係ないからこんな奥の手を出してきた割にはスペシャルな感じがしません。もったいない。
ショーン・コネリーが出てくると「インディ・ジョーンズ」になってしまうので、ジョージ・レーゼンビーかロジャー・ムーアが出て欲しかったです。


最後はスカイフォールで大した武器もなく戦う展開なんですが、頑張ってはいるものの完全に007映画じゃなくなってます。普通のアクション映画としては悪くないんですが、これがボンド映画かと言われてば違うと言わざるを得ない。
上司と部下二人の鬱展開があって事件は終わります。


そしてエンディング。新しい上司と受付嬢が決まって、いよいよ新生ボンドの始まりを告げます。
結局「カジノ・ロワイヤル」から始まって3作使って新シリーズにバトンタッチするわけですが、1つ気になるのがレイフ・ファインズダニエル・クレイグ相性というか居心地の悪さを感じるんですよ。漫才でいうどちらもツッコミでボケがないというか。
ダニエル・クレイグは旧シリーズから新シリーズの橋渡し的役割で次回作はボンドが変わるんじゃないか。あるいは変わるべきなんじゃないかという気がしてなりません。
ただ、ダニエル・クレイグにも変化を感じます。特に序盤の列車に飛び乗ったあとに、ちょっとワイシャツの袖を直すんですよね。それを見た瞬間「ああっボンドだ!」としびれました。
これまでの"新人諜報員"からだんだん風格のようなものが出てきた感じ。
あと2作の出演契約にサインしているそうなので、次回作もクレイグ・ボンドでしょうけど、次が正念場だと思います。



長々と書きましたが、007を劇場で見るのはずいぶんと久しぶりです。
最高の劇場で最高の映画体験が出来て、しかもこれ1000円です。満足感はすごい高いのですが、観た後はどうもモヤモヤしてなりません。
なんか、カツ丼食いに行ったらすごい上品なフランス料理が出てきた感じ。
食ってるときはスゲー、ウメーとなるのですが、店を出た後はどうも物足りなくて仕方がない。
あれ?007映画ってフランス料理だっけ?もっと食べ応えなかったっけ?と思って、家に帰って「カジノ・ロワイヤル」のDVDを見ちゃいました。


さらに未見の「慰めの報酬」のDVDを買いに行ったら(特典映像付きなら)BDの方が安いですよと言われて2度びっくり。観たらまたUPします。