サンシャイン・クリーニング(2008)/★★★★

サンシャイン・クリーニング [DVD]
”「リトル・ミス・サンシャイン」の製作チームが送る”と出ているが、実際には同じ制作会社(ビック・ビーチ・フィルム)が作っているだけで、監督も違うし脚本家も別。
なのに「リトル・ミス・サンシャイン」と驚くほど雰囲気が似ているのが不思議だ。


姉はシングルマザーで元チアリーダーのプライドが捨てられず、昔のボーイフレンドと不倫を続けている。
息子はちょっと人とずれているがゆえに、しょっちゅう学校から親の呼び出しをされる問題児。
妹はドジで何をやっても裏目に出るタイプ。
それぞれの事情から”事件現場の掃除業”である「サンシャイン・クリーニング社」を始める姉妹、そして家族の物語。


事件現場の掃除人という重いテーマを扱っているが、雰囲気はごく軽く、コメディ色を全面に出しながら実はシビアな出来事を扱っている。
こうゆう映画は大好物で、ひたすらワクワクしながら見ていた。
姉(エイミー・アダムス)がイイ!、妹(エミリー・ブラント)もイイ!道具屋(クリフトン・コリンズ・Jr)もイイ!
すごくリアルな設定だし、こんな商売を始めるまでの展開に無理がないから、すんなりと物語に入ることができる。
最初からどこかちぐはぐさを感じる人間関係の理由が徐々に明かされるので興味は尽きないし、この話の根底にある”あたたかい眼差し”がとにかく気持ちいい。


話として”事件の関係者との関係”をテーマにする手もあった(「おくりびと」ではそっちが主題になっている)が、本作はあくまでも事件現場は舞台であって、その事件性には踏み込まずこの姉妹の物語に終始しているのが潔い。
(一つだけ事件の関係者と関わるエビソードがあるが、いまいち成功しているとは思えない)
TVのニュースを見て”さあ商売だ!”と駆けつけるあたりは爆笑もの。
アラン・アーキンも頑張っているが、「ミス」と役柄がかぶるので損な感じがする。
なお、最初はチョイ役と思っていた道具屋がだんだんと存在感を増していくのが面白い。


抑制の利いた演出と出演者の好演、よく出来たシナリオながら「リトル・ミス・サンシャイン」には届かないのは、おそらく映画的なショットであったり、興奮であったりが足りないのではないかな?
「リトル・ミス・サンシャイン」評でのせたような印象に残るビジュアルがない。
それが「ミス」との違いだと思う。


ただ、ラスト直前まではものすごく不満だったけど、最後に”再生の物語”に結びついたことで、すごく好きな映画になった。