キリング・フィールド(1984)/★★★★★

これはホントにあったことです。
キリング・フィールド スペシャル・エディション [DVD]


私の理解ですが
ベトナム戦争を有利に展開しようと、CIAがお隣のカンボジアのクーデターを画策。それが成功してロン・ノル政権が樹立(1973年)。【最初のエピソードの背景】

名称が政府軍とクーデター軍(クメール・ルージュ)となっていますが、実際には逆でクーデターが成功したのが政府軍。それをカンボジア人の手に戻そうとするのがクメール・ルージュです。

しかし反米感情からカンボジアゲリラが登場し(これがクメール・ルージュ)。アメリカはカンボジアから撤退する。【2番目のエピソードの背景】

「これで戦争が終わった」と喜ぶ姿は本物ですが、すぐにポル・ポトは政権の安定を狙って民族の粛清を始めるのです

カンボジア人に主権を取り戻したはずだったが、ポル・ポトの命令により「原始共産主義」の道を歩み始める。その主義とは

  1. 都市部の人間はゲリラ活動に協力しなかったから敵。
  2. 共産主義は労働者のためのもの。したがって知識層は敵。
  3. 新しい時代は新しい人(要は子供)に従うべき。

の3点を主張し始めます。【最後のエピソードの背景】

首都プノンペンにいた都市部の人間は一人残らず(病人でも)地方へ追放。そのまま労働者として酷使。医師や先生などの知識層は全員抹殺。さらに外国語が出来る、字が読める、(さらにメガネをかけている)のは労働者の敵になりうるので全員抹殺。
子供は親元から引き離され、共同生活。さらに子供の言う事に大人が逆らえず、目に付く大人は片っ端から抹殺。

とても正気とは思えない虐殺がカンボジア国内(しかも同人種)の中で行われており、海外には全く伝えられませんでした。
本作はピューリッツァ賞を受賞したS・シャンバーグのノンフィクションを原作として、かなり事実に近いものだと思います。


映画的に見ると前半は外国人記者が退去するまでで、後半はカンボジア人記者の脱出劇の2部構成になっており、それゆえに緊張感が途切れることがありません。特にパスポートのエピソードが印象的でした。
南極物語」に構成が似ているという指摘を見ました(たしかに)。


ホテル・ルワンダ」や「サルバドル/遥かなる日々」と比べると、後半カンボジア人目線で描いている分だけ、その真摯さを感じます。
映画というよりは、上記の背景を頭に入れた上で生きた教科書、自分たちへの教訓として見るべきだと感じます。
たしかにアメリカの介入も問題ですが、結局、虐殺を許してしまった大勢の国民の方が問題です。ホントに止める術はなかったのでしょうか?