麦の穂をゆらす風/★★★★

アイルランドの未来を願いながら引き裂かれる兄弟の悲劇
麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション [DVD]
キリアン・マーフィー主演。目が「プルートで朝食を」の"キトゥン"でした。
1920〜30年代のアイルランド独立戦争レジスタンスに参加した二人の兄弟の物語。


アイルランドの豊かで大らかな自然とあまりにも簡単に失われる命。そのギャップに驚かされました。草原の丘陵地帯で草むらに隠れて敵を狙うレジスタンス。風のそよぐ音、鳥の鳴き声。やがて始まる銃撃戦。でも派手な爆発などはありません。


戦い(=暴力)が日常の生活。スポーツをしただけなのに集会を開いたとイギリス駐留軍に言いがかりを付けられます。銃を向けられ、裸になれと命令され、反抗して名を名乗らなかった友人はいきなり殺される。命が安い。ものすごく安い。安すぎる。
当然、裏切りもあるし、密告もある。恩を仇で返す奴もいれば、その逆に敵ながら同調する者もいる。
もはや誰を信じていいかわからない世界。その中で唯一信じられる兄弟もお互いの信じた道を守るために引き裂かれる。どちらもアイルランドの将来、人々の幸福を願っているのにもかかわらず。


これが、戦争映画ではなく歴史映画であることは、いくつかのディスカッションをみれば分かります。
みんな真剣に国の未来を議論していて、民主主義の持つパワーが感じられる場面です。
興味深かったのは無声映画を見ながら皆で議論している場面。音がないからみんな黙って見ていないんですな。


今まで見たどんな戦争とも違う、2006年カンヌ国際映画祭パルムドール作品でした。