三人の狙撃者/★★★★★

戦争帰りの帰還兵による大統領暗殺計画。いろんな意味で興味深い
三人の狙撃者 [DVD] FRT-168
とある田舎町の保安官のトッドは3年前に戦争で夫を亡くしたエレンのことが好きだが、いい返事がもらえない。
そこに「大統領が5時にこの町に立ち寄る。警護に協力せよ」との緊急連絡がはいる。警備を固めるトッド。そして狙撃に絶好の場所にはエレンの家があった。
シークレットサービスと共に見回りいったトッドは、元シークレットサービスだった祖父と8つの息子のエレン一家のほかに3人の狙撃者たちと遭遇する。
そのまま監禁されるエレン一家とトッド。大統領到着まであと1時間。果たしてこの計画は成功するのか?


暗殺者のボスをフランク・シナトラが演じていますが、戦争で多くの手柄を立てたが、帰還しても受け入れられず、プロの殺し屋となってしまった犯人像をクールに演じています。
ほとんど密室劇といってもいいくらいですが、脚本に無駄がなく、次から次へと起きる出来事にあっという間に終わってしまいます。(時間も76分しかありません)
小道具の使い方も上手くておもちゃの銃やこわれたテレビ、町の名前に至るまであちこち伏線が張られていました。


帰還兵ものといえば「ランボー」を思い出すのですが、本作のシナトラはあくまでもクール。ピンチのときでも機転を利かせて切り抜けていきます。(ホントは切り抜けてはダメなんですが・・・)ドラマ上の都合もあるんでしょうが、人質には大切にするし、結構しゃべるし、普段は本当いい奴なんですが仕事には厳しい。仲間はどんどんこき使うし妥協は一切しない。別の仕事をすればいいのにと思うのですが、人殺しの魅力に取り付かれてしまったと自分でも言っていました。


もう1つ面白いのはこれがアメリカ人にとって戦争や護身(銃)の啓蒙になっている点です。戦争で夫を亡くしたエレンは戦争に反対だし子供に銃を持たせるのも反対です。保安官が息子に銃を買ってやろうとするとエレンが怒ります。また、そのことで原因で祖父とも喧嘩になります。
祖父「憎悪や暴力は現実に存在する。善悪を知らずに法は守れん。
エレン「法を守って兵士になり戦争で死んでもいいと?」
祖父「息子の死は大義のためだ」
エレン「大義ね。母国から何千キロも離れた戦場で戦うことが?」
祖父「無菌室から出た動物がどうなるか知ってるか。いつまでもおれんぞ」
エレン「そうしてみせるわ」

でも、この事件を経験したエレンは最後に言います。「大義の意味が分かったわ」
んー。平たく言えば、"銃の普及してしまった社会では護身のための銃は必要"ということでしょうか?分からないでもありませんが、だからと言って戦争まで肯定するのはいかがかと。


いろんな意味で興味深い1945年のサスペンスの名作だと思います。

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オフィスワイケー版で観賞しました。(駅頭で380円で安売りしていたんです)
画面は青みがかったモノクロ。ブチブチとノイズは入りますが一応ステレオ。途中までは問題なかったのですが、終盤に入って突然画面のボケ&アスペクト比がおかしく(顔が丸顔に)なりました。なんとか見られるレベルだと思います。