ゲゲゲの女房(2010)/★★★★

TV版の映画化じゃない。赤の他人が夫婦になるまでの物語
ゲゲゲの女房 [DVD]
高橋ヨシキさんいわく「まー実に的確な演出とSEの使い方の上手いこと!」と大絶賛だったので観てみました。

観ていて”TVドラマの映画化は有利か不利か”をずっと考えていました。
朝ドラのイメージがあるので正直違和感がありましたし、なにより高揚感がありません。
実際、松下奈緒ではなく吹石一恵が女房ですし、物語は売れる前の「貧乏時代」のみ(なんと週刊誌へ原稿を入れに行くところで映画が終わってしまいます)。これでは「ゲゲゲ」とは言えないのでは?と言いたくなります。

でも、朝ドラのイメージを忘れて、一本の映画としてみると違った面が浮かびあがります。
この映画で描きたかったのは、結婚した2人が本当の「夫婦」になるまでという物語であって、別に「ゲゲゲの女房」でなくてもよいということです。
そこに(なぜか)「妖怪」というファンタジーがまぶしてあるのです。

この映画は昨今の映画とは一線を画するように、色んな制約が課せられています。
1.なるべくカットを割らない
2.劇伴(映画音楽)を使わない
3.「妖怪」以外は非日常的な描写は一切しない
4.大事なところは見せない(描かない)。説明しない。

1.の制約により家の中の構造がよくわかるようなアングルだったり、極端な広角や天井からの俯瞰だったりと登場人物を全部入れ込むようなカットが多用されています。
2.は代わりにSEが上手に使われていますし、実に”静かな”映画になっています。
3.ねじ式の柱時計や食事、靴下などがうまく使われていて感心します。
逆に「妖怪」は普通にそこに居たりして最初は戸惑いました。また劇中で何度か挿入される妖怪アニメーションが実に秀逸です。
4.お見合い、結婚、初夜、出産などは一切見せません。その代わり日々の生活はじっくりと見せるのです。それは、”結婚したから夫婦になるのではなく、一緒に生きていくから夫婦になっていくんだ”という主張を感じさせます。

オープニングのカットと、結婚して家の事情がだんだん分る下りがすごく面白いです。
2階の訳の分らない住人とか、ビックリするほどの貧乏とか。いきなり原稿を届に行かされるあたりとか。
今の時代だったら即離婚になる状況ですが、だんだんとこの2人が信頼しあっていく姿が心に残ります。

なお、主役の2人(吹石一恵宮藤官九郎)は実にすばらしい演技でした。

観ると語りたく映画のようで、素晴らしい映画評を観たのでリンクしておきます。
■映画で漫画家を描くには――『ゲゲゲの女房』☆☆☆★★ - 映画をめぐる怠惰な日常2
http://d.hatena.ne.jp/molmot/20110108/p1

■かろうじてインターネット 『ゲゲゲの女房』は別時間軸を持つ映画だよ。:
http://karoujite.blog104.fc2.com/blog-entry-187.html

■超映画批評『ゲゲゲの女房』30点(100点満点中):
http://movie.maeda-y.com/movie/01538.htm

■映画『ゲゲゲの女房吹石一恵宮藤官九郎 単独インタビュー - 映画の情報を毎日更新 | シネマトゥデイ:
http://www.cinematoday.jp/page/A0002767

■INTRO | 鈴木卓爾監督インタビュー:映画『ゲゲゲの女房』について:
http://intro.ne.jp/contents/2010/11/24_1512.html