2番目のキス/★★★★★

とても上質なラブ・コメディ!。監督のことは忘れて!
2番目のキス [DVD]
「TAXY NY」のマヌケな刑事ジミー・ファロンと今や"女王"のドリュー・バリモアのラブコメディ。
下手なアクション映画よりよほど「男の映画」でした。


ベンは生徒からも慕われる中学校の数学の教師。29にもなるのにいまだに独身。その訳は"狂"が付くほどの野球の"レッドソックス"ファンだったのだ。対するリンジーは数学の才能を生かした職業に就くキャリアウーマン。いわゆるバリキャリ。
最初はベンに合わせようと一生懸命にベンと一緒にソックスを応援しますが、ある事をきっかけにリンジーの心が離れてしまう。リンジーを失って何が自分の人生で大切なのか気がついたベン。とうとうベンはソックスと決別しようとある決心をします・・・。


自分の趣味に没頭になるのは男の特権。本作ではその熱狂振りも1つの見所。また趣味を同じにする悪友達の存在も欠かせません。
部屋はグッズで溢れていて、シーズン前のキャンプ先にも毎年出かけ、球場で会う人々を「夏の家族」と紹介します。(カットされましたが、時には遠征先にも応援にいくシーンもありました)
彼女に旅行に誘われても、"週末は試合があるから"と断ってしまいます。(本当は2人でゆっくり話したいことがあったのに)
あまりののめり込みぶりにリンジーもついていけないのですが「ソックスとあたしとどっちが大事なの」とは言いたくない。そのあたりの心情がよく描けていると思います。


ベンはメチャメチャいい奴で、病気?の時は甲斐甲斐しく世話をするし、両親のことも大事にしてくれる。やさしい言葉も掛けてくれるし、何より誠実。(でも春になると「冬の男」から「夏の男」へとじわりじわりと変貌していく)
ジミー・ファロンはそんな結婚向きな好青年を上手く演じています。
対するドリューもキャリアウーマンには見えないものの彼に合わせようとする女性をキュートに演じており、相性もばっちり。
ブコメの佳作を生み出してきた名脚本家によるウイットに富んだ会話と随所にくすっと笑える場面があって、コメディの佳作になっていると思います。


強いて言えば、ラブコメを見る客層(女性)と彼の趣味に共感する客層が違い大ヒットに至らなかった点と監督がファレリー兄弟(「メリーに首ったけ」「愛しのメリー」)なので、いつもの「毒」を期待するとがっかりする点でしょうか?

ファレリー兄弟はこれまでは自分達で脚本を書いて監督してきたのですが、原作となる「僕のプレミアライフ」にほれ込んで監督を希望したとのこと。
毒がなくてもこうした佳作を生み出すことができる証明にもなっています。


もう1つ。DVD特典を見て知ったのですが、原作のサッカーから本作の野球に設定を変える際にずっと勝てなかったのでレッドソックスを選んだのに、映画を撮影している最中に本当に優勝してしまったそうです。
本編では優勝した場面でジミーとドリューが(日本で言う)胴上げシーンに出演しているのは本当だそうで、そのあたりの苦労話がインタビューで面白おかしく語られます。
松坂の入団があと3年早ければ彼もハリウッドデビューしていたでしょう。


と言うことで、2006年のラブコメの傑作!でした。



この映画のキモは凝ったディテールとしゃれたセリフ。
以下気にいったセリフを挙げて見ます。
なおネタバレ全開なので、それでもよければどうぞ。

脚本はローウェル・ガンツとババルー・マンデル。 この2人の脚本は「ラブ IN ニューヨーク」「スプラッシュ」「ガン・ホー」「バックマン家の人々」「 プリティ・リーグ」「 エドtv 」「あなたのために」と佳作ばかり。
特に私の好きな「あなたのために」の脚本家であると知って納得です。


■はじめて野球観戦をしたリンジーがソックスの本を見ながら
「これ、だれ?カール・ヤジストラ・・」
(周りが声を揃えて)「ヤストレムスキー! (怒)」

■女友達がジミーの感想を聞かれて
「彼29よ。たしかに彼はサイコーよ。とってもチャーミング。でも22じゃない。なぜ今まで独身なの?普通ならバツイチぐらいになっているはずだわ。変よ。」
(その後、自分の切った髪と爪をビニール袋に貯めていた男の話があって)
「ぜったなにか秘密があるはずよ!」
(その後、実は隠していたことがあるとレッドソックスファンであることを明かすのですが、リンジーの一言
「やっぱりビニール袋があったか」


■ベンがボックスシート券を持っていると聞いて
「率直に聞くが、俺の女房どう思う?・・・チケットと交換しないか」
お互い顔を見合って(はーはっはっは)
男がマジな顔で「どうなんだ!」

■公園でバーべキュー。ベンはソーセージを焼きながら
「いいこと教えようか?君が好きだ。
君の好きなところをリストにしたんだ。今は持ってないけど、全部覚えてる。
1〜6までは体のことだから省略。
7番目 昼下がりに酒を飲む君が好き。
8番目 口を曲げて話す君が好き キュートだよ。
9番目 鏡を見るとき、最後に肩をすくめる。こう。もう、死にたくなるほどステキだ。
(この後、指輪の箱を出して)「ボクと開幕戦にいってくれる?」
指輪の代わりに開幕戦のチケットが。
<リンリンリンリンリンリーーーーーーーーーーン>by タイガー・リー


■リンジーレッドソックスのジャケットをプレゼントするジミー
「どうだい。本物だよ」(じっと見て )
「それを着た君に興奮するよ」

■ジミーの野球論
「"運のいい日"はあっても"運"だけの選手はいない」

■両親がゴルフ好きだと知って、急遽ゴルフコース招待したベン。母親がそのことを伝える電話で。
「ベン?あたしのベンが?。ところで、彼は何しているの?」
「今、パパのタマを洗っているわ」
カットが変わると父親のゴルフボールを洗っているベン。
ベタだけどおかしい。

■部屋はソックス・グッズで溢れていますが、トイレットペーパーはヤンキース。糞食らえ!というところでしょうか?

■球場で「バンビーノの呪い」と口に出すと周りがドン引き。どうして口にしてはいけないか周りがかわるがわる説明します。アメリカ映画らしいシーンです。

■シーズンチケットを悪友達に分配する場面。いい試合のチケットの取り合い。「チケットが欲しかったら俺の前で踊って見せろ!」と部屋の中なのに拡声器煽る場面がおかしい。

レッドソックスの試合がある晩にリンジーの両親と会うベン。食事中に経過を話し出す人がいるとベンは「あーあー」と叫びながら耳に手を当てます。

(以下編集中)