接吻(2008)/★★★★

小池栄子のバースデーソングが耳から離れない
接吻 デラックス版 [DVD]

ネタバレ全開でいきます。

この作品のウリにもなっているラストシーンですが、よく考えてもわからないし、この作品の本質ではない気がするのでパスします。
(監督やキャストが言っている「死」に対する「生」への動物的な衝動というのが、私的にもしっくりきますが、それ以前に「やっぱ女はわからん」というのが正直な感想です)


この映画の見どこは3つだと思います。
1つ目はオープニング。
カナヅチをボケットにいれて歩いているだけなのに異様な緊張感。
実際の惨殺場面は出ないのですが、逃げ出そうとする女の子の髪を引っ張る短いカットはゾッとしました。


2つ目は主役達の笑い顔。
どちらもマスコミにカメラを向けられカメラ目線で笑うんですが、その異様さが光ります。
普通笑顔ってホッとするものですが、状況によってはゾッとするものなんですな。
豊川悦司の笑い顔は誘い込むような感じですが、小池栄子の方は勝ち誇ったようにも見えます。


3つ目はラストの小池栄子の歌。
この時ある思いを秘めて歩きながら歌うんですが、鳥肌が立ちました。
ノーマルなのにまるでスローモーションで撮っている様な時間の密度です。
この映画のキーワードとして”誕生日”というのがあるのですが、その全てがこの瞬間に集約される。そんな名演技だと思います。


脚本が監督の妻でもある「万田珠美」と言うことで、これは女性の映画だと思いました。
「なんで、私に相談しないの!」と問い詰めるあたりや「分かり合えるのは私たちだけ」「2人だから全然平気」と言うセリフ。面会室でうたた寝する場面など女の人じゃないと描けないと思います。


でも、なんといっても「小池栄子」ですよね。
TVでは「カンブリア宮殿」で見かける知的で聡明な女性ですが、本作ではこんな面もあったの?と思うほど、役になりきっています。
恐怖のメロディ」とも「危険な情事」とも違う。ネクラだけどごく普通の女性なのに思い詰めると、とことんやっちゃう。
これは彼女の代表作となるでしょう。