ガープの世界/★★★★★

「人生は冒険だ」
ガープの世界 [DVD]
ジョン・アーヴィングの原作をスティーヴ・テシック(「ヤング・ゼネレーション」)が脚本化し、ジョージ・ロイ・ヒル(「明日に向って撃て!」「スティング」)が演出した1982年の秀作。


夫婦のわずらわしさなしに子供が欲しい看護婦ジェニー(グレン・クローズ)は瀕死の患者の上に乗り子供を授かる。そして生まれた子供がT・S・ガープ(ビン・ウィリアムズ)。このちょっと変わった母親とレスリングをこよなく愛する作家となったガープの様々な出来事を描く。


とにかく好きなんです。この映画。何がいいのか自分でもうまく説明できませんが、不思議と惹かれるものがあります。
ストーリーというものはあまりなく、1つ1つのエピソードがつながっていく感じなのですが、悲劇と喜劇、笑いと絶望というようなものが交互に展開し、まさにアーヴィングの世界そのものです。

では、そのエピソードの1つ挙げてみます。
夫(ガープ)の浮気に対抗して?自分も不倫をしてしまう妻(メアリー・ベス・ハート)の浮気がばれてしまいます。
夫から「相手に別れろと電話しろ」と言われ、妻も浮気相手に終わりであることを告げるのですが、最後にどうしても会いたいと家まで来てしまいます。家の中に入れるわけにもいかず、車で説得をすると「最後に1回だけフェ○をしてくれないか」と懇願され、別れる事を条件に行為をしてあげます。
しかし怒りに我を忘れた夫(と子供達が)急いで車を止めようとして、その行為の最中に車に追突してしまいます。・・・
結局、不倫相手のチン○は噛み切られ、ガープは失語症、妻はむち打ち、上の子は片目を失くし、下の子は亡くなってしまいます。

こんな悲惨な出来事なのに、それを知ったオカマのジョン・リスゴーは「麻酔をかけて取った私でさえあんなに痛かったのに、噛み切られるなんて」と嘆きます。まさに悲劇と喜劇が同居した名場面ですね。
変に演出されると見る側も引きますが、こんな調子で淡々と物語が進行すると素直に見ることができるから不思議です。


苦手なロビン・ウィリアムズですが、この作品だけは別。また、強烈な個性を発揮する鉄の看護婦のグレン・クローズと元フットボール選手だったオカマのジョン・リスゴーが光っています。

また、今回見直して感じたのは、「絵」に力があるということ。浜辺の近くのジェニーの家、ガープが過ごした学校、集会の場面、ガープ(や子供たち)の絵、ガープの家の庭や暴走する車。どれをとっても印象的で「絵力」と言うものを感じさせます。撮影は「アマデウス」「レナードの朝」のミロスラフ・オンドリチェク。


ところで、ジョージ・ロイ・ヒルはこの映画で全てのシーン(カット?)を90秒以下にしたのだそうです。そういった気遣いがこの映画のリズムになっている気がします。


最後にガープが語るセリフを載せておきます

過去の人生が1つの弧を描いてて出来事が次の出来事につながってる一本の線だ。
人生は冒険だ。