プルートで朝食を/★★★★★

キリアン・マーフィ萌え。オカマ版「嫌われ松子の一生」?
プルートで朝食を [DVD]
たまたま「トゥモロー・ワールド」そして本作と立て続けにイギリス映画を観ましたが、どちら爆弾テロを日常的に描いていました。この情勢不安がイギリス社会に大きな影を落としているのがわかります。


教会の前に捨てられたパトリック(自称"キトゥン")は養子に出される。子供時代は3人の親友と楽しく過ごしていたが、女装癖があり家族の悩みの種でもあった。結局、家を飛び出して母親探しにロンドンへの向かう。果たして、パトリック=キトゥンは母親に会えるのか?


キトゥンはオカマでもやたらと綺麗なせいか、男たちが放って置かず、次々と現れては消えていきます。また、親友たちとの関係や現れた男達によってエピソードが展開するのは「嫌われ松子の一生」とよく似た構造をしているなぁと思いました。さらに、その国の歴史が象徴的に描かれる所も似ています。


全体は36の章に分かれており、それぞれタイトルが示され物語が進行するのですが、ちょっと細かすぎて、先が読めてしまう気がするのが少々残念。ただチャレンジングな姿勢は評価したいです。

本作の見所は何といってもキリアン・マーフィのオカマ姿
インディアン姿も捨てがたいのですが、やはり終盤のジャケットにもなった「モコモコ羽だらけ姿」と「"サッチャーに負けない"スーツ姿」が白眉でしょう。ドラマ的にも盛り上がるシーンなので強く印象付けられます。

もう1つの見所は70年代前後のポップスがふんだんに使われているところで、私が知っていたのは「シュガー・ベイビー・ラヴ」「フィーリング」「風のささやき」ぐらいなんですが、雰囲気は楽しめました。
特に「風のささやき」が使われる場面では、滑稽なのに(ある意味)もの凄く残酷で意地悪な場面で使われていてぐっと来るものがありました。(「風のささやき」は私の大好きな歌です)

全体的に「悲劇なのに滑稽」「おかしいのに笑いきれない」といった感じのテイストで前述の「嫌われ松子の一生」やJ・アーヴィングの一連の作品(「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」)、オープニングのヒバリや主人公の無垢さは「フォレスト・ガンプ」。またオカマのロードムービーとして「プリシラ」を連想させます。


終盤の展開はとても"暖かく"感動の嵐でした。ただし、原作ではもっと悲壮的だったものを、映画に合わせて大幅に変更したそうです。
これからも何度も見る映画になりそうです。

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参考
■プルートで朝食を
公式サイトです。ストーリーにチャプター一覧があるのがうれしいです。

その他、細かい内容を自分用のメモとして書いておきます。
巻き毛が素敵で街一番の美女だった母親が似ていたと評されるのがミッチー・ゲイナー。「南太平洋の主役」と紹介されてましたが「ショウほど素敵な商売はない」が手元にあるので早速観賞したいと思います。また、キトゥンが雨に打たれて見ていたのが「慕情」。主題歌も使われています。

公式サイトにもあるのですが、これを見るとストーリーを思い出せるので、自分用のメモ。

  1. 私は捨てられる
  2. 育ての母の靴
  3. 友人達の紹介
  4. お母さんの紹介
  5. お父さんの紹介
  6. 私は過ちから生まれた子
  7. 聖キトゥン
  8. ダンスのお金
  9. 星のハイウェイ
  10. 変化
  11. モホークスの紹介
  12. 私のショウビス・キャリア
  13. 秘密の場所
  14. とてもとても真剣
  15. 深い海
  16. 私の領分じゃない
  17. 報復
  18. 闘争で荒れるアイルランドを去り・・・
  19. あなたの住む街角?
  20. おとぎ話
  21. 香水
  22. キトゥン 希望を見つける
  23. 私のショウビス・キャリア その2
  24. 幻の女
  25. 革命
  26. 中絶
  27. 私のタイツがズタズタ!
  28. キトゥン 世界を救う
  29. 私のステキな狭い独房
  30. 愛とはかくも すばらしいもの
  31. 5人のやさしい女たち 協同
  32. あなたが本当に住む街角で
  33. じっとしていて 私の大事な人
  34. 交通整理のおばさん
  35. クリスマス・イヴ
  36. 体が引き裂かれそう

本DVDはスタッフ&キャスト紹介でインタビュー映像も見られるちょっと変わった形式でした。
そこで、ブレンダン・グリーソン(気ぐるみを着ていたオヤジ)の発言が本作の特徴をよく現していると思いますので掲載しておきます。

「マッケーブ(原作・脚本)は自由な視点でアイルランドを描く。過去になかった手法でその国を探求していくんだ。
マンガ的要素を加えながらも手加減のない正直さがある。確かな感性がなければ扱えない素材だ。
この映画はいくつかのエピソードから成り立ち、そして、そこには色々な登場人物が現れる。
ステレオタイプではなくリアルなキャラクターたちだ。彼らには心がある。それがマッケープの持ち味さ。
簡単にキャラクターたちを非難したりしない。彼らの行動は私たちにも分かりやすいものだ。
それでいて、普通の人たちとは違うんだ」