トゥモロー・ワールド/★★★★★

打ちのめされました
トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション [DVD]
なんか、物語に入り込みすぎて、中学生の感想文のようになってしまいました。


この作品で私が一番感心したのは、その作りこまれた世界観です。
子供が産まれなくなった世界とはどのようなものか?。
学校は廃墟と化して、ブランコには乗るものはおらず。若い世代は妊婦を見たことがなく、つわりも知らない。しかしその上の世代(つまり子供を持ったことがある世代)は男親でも"げっぷ"のさせ方を知っており、(なぜか)へその緒はすぐに切らなくてもよい事を知っている。

また、やたらと動物が多いのも"子供の代替"のように感じました。(あの宙に浮かんだものも含めて)。画面には常に何らかの動物が映っている気がします。

未来の自動車はほとんど現代と変わらないのに、ビルの壁編が巨大なモニターになっている。(大型のビジョンが高架下に無造作に設置されている場面もありました)。どうやらメディア関係のハイテクだけ進化したようです。
内戦状態とはいえ、街はゴミだらけで汚く、両親の家も雑然としています。子供がいないと散らかす人がいないからかえって綺麗に過ごすのかと思ってましたが、手本を示す必要がないから、意外と汚くなるかもしれないと思いました。


観る前に疑問に思っていたのは、ただでさえ子供(子孫)がいないのに、なぜ内戦状態なのか?でした。(だってどう考えたっておかしいでしょ。普通なら「産めよ増やせよ」で下手をするとポルノの題材にさえなりそうなテーマです)
でも、観終わって感じたのは「寂寥感」でした。
人類にはもう先がないと何となくみんな分かっている。だからからこそ、その怒りや不安や寂しさを"戦争"という形で誰かにぶつけている。そんな風に感じました。


多くの方が語っている通り、長回しのシーンは凄いと思いますが、あくまでもドキュメンタリーとして表現するという目的のもとで使われているので、"狙っている"感じがなくとても自然でした。


汚い近未来物ということで「ソイレント・グリーン」とか「赤ちゃんよ永遠に」を思い出しました。(「赤ちゃんよ永遠に」は原作しか読んだことありませんが)
また、よく作りこまれた世界観ということで「ウオーター・ワールド」や「マッドマックス2」も想起させますが、キリスト教圏の人々は"アノ"女性に"聖母マリア"を見るのではないでしょうか?それを匂わせる会話もありますし。


P・D・ジェイムズの原作は読んだ事ありませんが、おそらく細部は監督のアルフォンソ・キュアロンとティモシー・J・セクストンの共同脚本で築き上げたのではないかと思います。

見終わった後、打ちのめされました。
観るたびに新たな発見がある。そんな映画だと思います。