ブロークンフラワーズ/★★★☆

意外と楽しめました。さて、ラストの意味は?
ブロークンフラワーズ [DVD]
成金で女たらしで面倒くさがりやのドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)の家にピンクの封筒が届いた。
「20年前に別れた時あなたの子供を妊娠していました。その子が家を出たので、あなたを訪ねるかもしれません」
おせっかいな隣人に背を押されて、ドンは20年前に付き合っていた女性たちを訪ねる旅に出る。


最初のゆるい展開に、見た事を後悔したのですが、お節介な隣人が現れたあたりから俄然面白くなり、最後まで一気に見てしまいました。
まず、隣人(ジェフリー・ライト)との関係が面白くて、隣人のお節介に迷惑そうな割には足しげく通ったり、誰にも心を開かなそうなフリして、実はものすごく信頼している感じが、おかしいです。

また、たずねる女性たちそれぞれに特徴があり、少しずつ"ズレ"てる感じがなんとも
過去に付き合った女性達にシャロン・ストーンフランセス・コンロイジェシカ・ラングティルダ・スウィントンが出てきます。

見所はかつての"女友達"がドンの事を思い出す瞬間。ここは各女優の腕の見せ所。私はシャロン・ストーンが一番うまいと思いました。(エピソード的にもこれが一番好き)

本作は、最小限の動きで最大限に感情を伝える"究極の省エネ演技者"ビル・マーレイあってのものだと思いますが、「ライフ・アクアティック」よりは生かされていたかも知れません。(ライフもビルなしには成立しない物語ではありますが)。


ところで、賛否両論のラストシーンですが、私はこう思います。

親切にした"こうなって欲しい息子"と車で見かけた"こうなって欲しくない息子"の2人がいて、はっきりしない今、どちらの可能性もあるわけです。
そこで、結局知らないほうがいいと思ったのではないでしょうか?
そして、家族を持とうとした自分への軽蔑であるとともに、家族の持とうとしなかった自分への後悔と寂しさであると思います。
家族の煩わしさを避けて来た自分が、成人した息子だけを欲しがった身勝手に気がついたのが、あのビル・マーレイをぐるりと一周するショットだったのではないかと感じました。
よく見ると、最後のアップでは目だけが激しく動いており、何か大きな感情が彼の中で渦巻いているのが分かります。


監督はジム・ジャームッシュカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しているそうですが、それはあまり気にせず、つまらないと感じたら「つまらない」と言った方がいいと思います。
この作品は難しい言葉でやたらと絶賛している批評が多すぎます。