素晴らしき哉、人生!/★★★★

ファンタジーゆえにかえってリアルさを感じる
素晴らしき哉、人生〈特別版〉 [DVD]
クリスマス映画の代表格として「三十四丁目の奇蹟」と並んでよく出てくる映画で、フランク・キャプラ作品を見るのは「或る夜の出来事」に次いで2本目。
ファンタジックな作品として紹介されることが多いのでもっと甘い感じを想像していたが、逆にリアルさを感じた。
失意を感じて自殺を図るジョージ(ジェームズ・スチュワート)の前に天使が現れて「君のいなかった世界を見せる」という部分だけがファンタジーであとはほとんど現実的。特にスチュワートが荒れる場面なんて鬼気迫るものがあった。
映画としては130分というのは(この手のドラマとしては)長すぎるが、そのほとんどがジョージの不運な半生が描かれる。しかも主人公のジョージは悲嘆するでなくさりとて奮起するわけでなく、現実として淡々と受け入れる。
決して昨今の「クリスマスファンタジー」と同列には並べられない作品だと思う。

これを見ていて私の出身地には今でも残る「無尽(むじん)」を思い出した。「無尽」とは地域の人たちが毎月お金を出し合って集まったお金をセリに掛けて落とすシステム。たとえば20人が5000円ずつ持ち寄ると10万が集まるが、物入りな家はそれを9万とか8万とかで落とす。ただし10万を払うまではその家はセリに参加することはできない。これがまさしく利子に相当し、その集まりの飲み食い代はその利子から捻出される地域の相互互助金融システムだ(ただし今では形骸化し地元の老人の集まりと化している)
ここから信金や信組ができ、規模が大きくなって銀行になっていった(と思う)

金は預ける人と借りる人がいて成立するが、金融が職業化する前はお互いの顔や事情が分かって融通しあって成立していたものなのだ。ここでのジョージはまさにその役割を果たそうとしている(それも住宅という分かりやすい形で)。この作品では「良い金貸し」と「悪い金貸し」が登場するわけで、つくづく金融業とは難しいものだなと感じた。

フランク・キャプラウィリアム・ワイラー(「ローマの休日」「ベンハー」)やジョージ・スティーブンス(「ママの想い出」「陽のあたる場所」)らと共に「リバティ・フィルムズ」を設立して本作を製作したが、52万ドルの大赤字を出してこれ1本だけで倒産した。現在はパブリックドメインとなってクリスマスの定番映画としてテレビ放送されたり、安価で手に入れる事ができる。
もし、これが公開時に大ヒットしていたら、今でもこれほどの人気を誇ることができたのだろうか。この事実こそが「IT'S A WONDERFUL LIFE」と言えないだろうか?

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[all cinemas go forward to freedom!] 素晴らしき哉、人生! -- online KONGE JIHO