英国王のスピーチ(2010)/★★★★★

脚本・演出・出演者。3拍子揃って文句なし
英国王のスピーチ コレクターズ・エディション [Blu-ray]
ソーシャル・ネットワーク」を抑えてアカデミー賞作品賞受賞ということで、逆に期待せずに見たのですが、実によく出来た映画でした。
お話は映画というより舞台劇に近く、ジェフリー・ラッシュコリン・ファースの吃音症を直していくというもの。時代劇ということもあってほとんどが室内の会話劇です。

にも関わらず見るものをぐいぐい引っ張っていくのがデヴィッド・サイドラーの脚本。(過去作品は無名のTV用作品ばかり)
正攻法でありながらウイットに富んだ会話と魅力的なキャラクタ設定、吃音を直すための様々な訓練とそれら伏線が最後にどんどん回収される爽快感。「王道」を描く王道の脚本でした。

逆に演出(特にキャラワーク)はすごい特徴的で、独特のフレーミングは本作(監督のトム・フーパー)ならではのもの。節度のあるカッティングや大胆な省略も見事です。


予告編をみると吃音症の治療をする二人の話だと思ったのですが、本当のテーマはジョージ六世が王となるための成長物語で、そのためにジェフリー・ラッシュコリン・ファースはくっついたり離れたりするのが気に入りました。また幼少の頃の悲惨な出来事や幼くして亡くした弟の話などヨーク公の人物像が少しずつ浮かびあがる様子は心を打たれます。


意外にいい味を出しているのが妻のヘレナ・ボナム=カーター。ライオネルの妻がビックリする顔を前に「最初は陛下で、二度目からは奥様でいいわよ」なんてサラッと言ってのけるあたりは痛快でした。
このキャラクタ(演技プラン)は相当悩んだのではないでしょうか?気さくでありながらどこか王室の品格を感じさせる演技は見事でした。

プロデューサーにジェフリー・ラッシュが名を連ねている通り、もともとジェフリー・ラッシュありきの企画だったようで、ライオネル公のキャスティングは難航したようですが、コリン・ファースが見事に大役に応えていました。


素晴らしい脚本と独特の演出。主演(3人)の素晴らしい演技。風格さえ感じさせる作品でした。ブラボー!