天国の口、終りの楽園。(2001)/★★★★★

イルサが遺(のこ)したもの
天国の口、終りの楽園。 [DVD]
エネルギーのあり余る高校生フリオとテノッチの頭は女の子とヤルことでいっぱい。
夏休みなのにそれぞれ恋人は旅行に行ってしまう。ヒマを持て余す2人。
偶然知り合った人妻ルイサを誘って(というか誘い出されて)口から出まかせに言った「天国の口」というビーチを目指してドライブに出かける。
最初はうまくいっていた3人だったが、ルイサが片方とデキてしまったことから、それぞれの立場が変わっていく・・・。


この映画で感じるのは3つ。
1つはかなりエロ風味の味付けがかなりされていること。(日活ロマンポルノに近いものがある)
いきなりセックスシーンから始まり、次はいきなりパンツを脱ぐ女の子が出てくる。
ただしあまりいやらしくはなく、それぞれの関係を現すものとして描かれている。
このエロ風味は物語に真実を与え、深みを増す役割を示している。
実際、先日TV放送した際はエロシーンがなかった(カットされていた)ようだが、見た人が「物語がすごく淡白になった」という感想をいくつか見かけた。

2つ目がナレーション。
心象を語るのではなく、もっぱら人物の背景とその後を説明するのに使われる。
その意味については、3つ目と合わせて考えたい。


3つ目がこれは”だれの”物語なのかということだ。
高校生の青春物としてもよくできているが、最後まで見終わると実はルイサの物語だと気づく。
「自分がいつまで 人々の心に残るか」を考えたルイサの行動によって、2人の高校生は大人へと変わっていく。つまり前半のバカっぷりと最後の2人の様子の違いがルイサの残したものに思えるからだ。
ルイサを中心に考えると、ドライブの途中でみたメキシコの風景全てがルイサの思いと重なっていく。
事故で死んだ人、かつて事故のあった場所、乳母の出身地、警官に止められる車、結婚式で止められる場所、自分と同じ名前のマスコット。子供を持ったらどう?と言われる場面。
どうでもいいような事がナレーションで語られる。
車の中でもいろんな会話がされる。

しかし、本当に言いたかったことは最後まで語れることはないのだ。
彼女は言う「漂う波のように身を任せなさい」。これがイルサの本当の気持ちだったのだろう。
一番心を寄せたい相手に裏切られ、自分一人で生きていく事を決意するイルサ。
体を許しても心は許さなかったイルサの孤独を感じた時、2人は大人になったのだと思う。


監督は「トゥモロー・ワールド」のアルフォンソ・キュアロン