グラン・トリノ(2008)/★★★★★

ガンコ爺の説教コメディ。驚きの連続。
グラン・トリノ [DVD]
イーストウッドが役者として出演する最後の作品だと言われていますが、これが驚きの連続でした。

本作はイーストウッド作品には珍しく、前半はほとんどコメディ。それも、イーストウッドのキャラクタを逆手の取ったセルフパロディみたいなノリでした。
出だしのお葬式で”うー”なんて唸る様子は大笑いですよ。
床屋のシーンなんか完全にコントですし、いいって言ってるのにどんどん物を持ってくる近所の女たちもおかしい。
イーストウッド映画でこれだけ腹を抱えて笑ったのは初めてです。これが最初の驚き。


次は最後の方の神父のセリフで復讐を匂わせることを言うんですね。
「ミリオンダラー」では毎日協会に通いながら救われなかったのと全く逆のパターンで、本作ではイーストウッドの心の声の代弁者(または迷いを振り切るきっかけ)になっています。
キリスト教的な作品が多かった事を考えると、これは驚きです。


最後の驚きはラストの展開。
あの”ハリーキャラハン”がこんな決着をするとは読めませんでした。
「やられる前にやれ」から「手を出した方が負け」的な転換はすごく大きいと思います。

ただし、朝鮮戦争で自ら手を下した(=人殺し)がゆえに生涯自分を許すことができなかった主人公を思うと、罪を相手に犯させる事によって暴力の連鎖を止めるという逆転の発想がすごく目新しい。
通常のハリウッド映画ではあり得ない展開だと思います。


ということで、イーストウッド映画としては驚きの連続で
「このオヤジはいくつになってもアグレッシブ」
を痛感させる作品だと思います。スゲー!