チェンジリング(2008)/★★★★☆

出てくる人全てがハマり役。イーストウッド流の貫き方
チェンジリング [DVD]
2008年度主演女優賞ノミネート。
子供が誘拐されるまでの下りは、とても他人事とは思えずゾッとしながら観ていましたが、そこからは予告編で観たとおりの展開。
ところが中盤から別のドラマが始まり、ぐいぐい引き込まれながら2つの法廷劇へとなだれ込んでいきます。


とにかく出てくる役者が(ちょっと出の人も含めて)全てが素晴らしく、これが”イーストウッドマジック”だと感心しました。
憎らしい警部、ゴードン・ノースコット、市長、警察署長、婦長、看護婦たちなどの悪役達(おっと身代わり少年も)。対する職務に忠実な刑事、助けを出す神父、有能な弁護士、犯罪幇助の少年、そしてそっと見守る同僚。その全てが素晴らしい。
もちろんアンジェリーナ・ジョリーもこれ以上ないくらいのハマり役でした。


「省略」と「緊密」のバランスの良さにイーストウッド作品を感じました。
普通なら流すところをきちんと見せながら決して下品にならない。「嫌なもの」「見たくないもの」から目をそらさず淡々と描きながら物語を積み重ねていくところが実にうまい。
とくに中盤の事件の描き方や終盤のクライマックス描き方はイーストウッド作品ならではという気がします。


警察の偽証に反論していたのに、最後は味方である牧師の忠告も受け付けない。だれが何と言おうと「自分」というものを貫き通す頑固な姿にイーストウッドの堅い意志を感じました。
やっぱタダもんじゃないです。