この自由な世界で(2007)/★★★★

イギリス版女社長奮戦記。厳しい現実とシニカルな視点が印象的
この自由な世界で [DVD]
麦の穂をゆらす風」のケン・ローチ監督作品。
働いていた人材派遣会社をクビになったシングルマザーのアンジーカーストン・ウェアリング)はそれまでの経験を生かすため自分で会社を作った。

やり手だったこれまでのノウハウと、持前のバイタリティを生かし外国人労働者の斡旋業に乗り出す。
最初は順調だったが、やがて資金繰りや不遇な外国人労働者の世話やらで不法移民の斡旋をし始めるあたりから厳しい現実の壁にぶつかっていく。


邦画であればコメディにもなりそうな題材だが、本作ではユーモアは少なめ。現実的でシニカルな視点で描かれる。
「自由な世界」=自分たちの幸福を追及するつもりが、いつの間にか搾取される側から搾取する側に回ってしまう展開が見事でした。
(ファーストシーンとラストシーンが繋がっていたります)。


主演のカーストン・ウェアリングは自分の目的を達成するために、つい周りを忘れてしまう女社長を熱演。
これが素じゃないかと思うくらいハマっていて、見ていて「あーあ、またやっちゃった」と何度も思いました。
でもこんな人、いっぱいいそうだなぁ。>特に中小企業の社長さんとか。
責任感からでしょうが独断専行ともとれる意思決定や物言いをする。それがいい時は頼りがいのある感じにみえるが、悪く転がると法を犯してでも・・・となってしまう。
シングルマザーなので、家庭(というか子供)と仕事のバランスも取らなければいけなりません。子供が問題をおこして、学校に呼び出されたり、両親に”仕事はほどほどに”と言われて喧嘩になったりします。
こんなに頑張っているのにと思えば思うほど周りが批判的になっていく。やるせない話でもあります。


イギリスの労働者事情に移民問題が絡んで、厳しい現実がひしひしと伝わる。
自由とは何か、豊かさとはなにか。
結局、富=生活の豊かさ(=幸福)とは生み出されるのではなく、誰かから奪う(搾取する)事でしか得られないのでしょうか?。
観終わったあと考えさせられる映画だと思います。