イン・ザ・ベッドルーム/★★★★

子供を持つ親の気持ち。ドキュメンタリのよう。
イン・ザ・ベッドルーム [DVD]
大学生の一人息子を持つ医師で理性的な父(トム・ウィルキンソン)と学校でコーラスを教えている厳格な母(シシー・スペイセク)。息子の恋人は年上で2人の子持ち(マリサ・トメイ)で、元夫が復縁を迫っている。そんな息子に父親は見守ろうと言うが母親は反対である。
息子は建築家の夢をあきらめ、漁師になって彼女と暮らす事を真剣に考るが、元夫の暴力は息子に及びやがて悲劇が起きる。(ここまでが前半)
一人息子を失って夫婦もバラバラになり、それぞれ怒りと悲しみに満ちた日々を送るが、とうとう夫婦の感情が切れたときある決心をする。

題材もそうだが、映画というよりある種のドキュメンタリーに近い。前半の息子に対する夫婦の温度差や、事件の後のさまざまなエピソードの積み重ねにより「大学を辞めてまで子持ちの女性と結婚しようとする息子」や「息子を事件(や事故)で失った痛み」などが延々と描かれる。入り込めない人は退屈するだろう。

この映画では音楽がほとんどない。その代わりコーラスが効果的に使われており、まるで鎮魂歌のようだ。

演出的にも事件の後に父親がマリサ・トメイに会いに行く場面が印象に残る。お互いに戸惑いながらも言葉を交わそうとするが、レジの仕事をしているので会話が途切れがちになり、話すきっかけを失ったまま立ち去る。なんということはないのに緊張感がすごいと思った。

ところで、元夫の裁判で実際に撃つ場面を誰も見ていないという理由で「事故」と判断されるのはいかがなものか。銃を持ち出した段階でその意志は十分あったと思うのだが。この裁定も"変"だが、だからといってラストの展開も承服しかねる。

ラストで父親が「笑顔の彼女と男(元夫)の写真があった」とつぶやくところがあるが、あれは何を意味しているのか。よくわからなかった。