ブラジルから来た少年/★★★★★

2年半の間に94人の男を殺すナチの壮大な計画とは。構成が見事。
ブラジルから来た少年 [DVD]
南米のパラグァイ。ナチの残党が集まりある人物を迎える。その人とはヨゼフ・メンゲレ博士(グレゴリー・ペック)。かつてアウシュビッツで数千人の子供を実験のために切り刻んでいた男だ。メンゲレはある作戦の開始を宣告する。その作戦とは今後2年半の間に世界に散ばる94人の男性を殺すというもの。しかも皆65歳の公務員であるという。
その計画の存在を知らされたのがナチの残党を追いかけるリーバーマン(ローレンス・オリヴィエ)。
やがて計画は遂行され何人かが殺される。調査を始めたリーバーマンは立ち寄った2件目の家で奇妙な事に気づく。なんとその家の子供は1件目の子供と双子のようにそっくりだったのだ。思わずそのことをもらすと、実は子供は養子である女性に斡旋されブラジルからやってきたのだ。
その女性とはリーバーマンが刑務所に送ったナチの女看守だった。
はたして悪魔メンゲルの壮大な計画とは何か。なぜ世界中の94人もの男を殺すのか。リーバーマンはこの計画を止めることが出来るのか?


特撮は一切ないけどまぎれもないSFサスペンス。「ナチ」ある「技術」の組み合わせは案外誰でも思いつきそうなアイデアですが、その後からここまで話を展開させた原作(アイラ・レヴィン)が見事。その意味で一度目より二度目のほうが楽しめるとおもいます。実際今回見直して本当に構成がうまいなぁとため息がでました。
また、実力派の出演者たちも見ごたえ十分。特にドイツなまりのグレゴリー=メンゲレ博士が圧巻。それと冷血な少年も印象に残ります。

監督はフランクリン・J・シャフナー。寡作だけど「猿の惑星」「パットン大戦車軍団」「パピヨン」そして本作と傑作がずらりと並びます。(ただし本作は地味だったためか劇場未公開でした)

音楽はジェリー・ゴールドスミス。ドラマティックなスコアは健在ですが、テーマはなんとワルツ。これがともすれば、無味乾燥になりがちな本作品をエレガントに艶やかに見せています。

グレゴリー・ペック、冷血な少年、シリアスな展開とJ・G・スミスの音楽。見ていてなぜか「オーメン」とかぶってきました。1978年の傑作です。