トゥモロー・ワールド(2006)/★★★★★
ディストピアものの傑作だと思う
大好きな映画なのでご近所の名画座に駆けつけました。ヨカッター!
今回観て気がついたのは、その語り口のうまさです。
この映画は「いかにこの世界観をスムーズに伝えるか」がカギだと思いますが、出だしのショッキング演出から、世界で一番若い男の訃報とニュース映像そして世間の人々の反応。その後両親の家へと、実に手際よく伝えています。
例えば父親がある組織の冗談を言おうとすると、先に息子がその組織の批判を言います。「いや冗談が言いたかっただけだ」と父親が言い訳をしてからその冗談を言うのです。
観客からすると知らない組織をネタにした冗談を言われても分からないけど、先に息子の批判があるから、ジョークの意味も伝わる。そんな配慮が随所に生きています。
つまりこの世界の人には当たり前でも観ている側は全く分からない。そんな中でもいかに自然に会話しながらもその意味が我々にもわかるように伝えてるんですね。
よくできていると思います。
(そのほかの感想は以前の感想をご覧ください。
SFを非現実的として楽しめない人もいますが、こうしてSFでないと描けない(あるいは純粋培養的な描き方は出来ない)ものもあると思います。
大好物のディストピアもので思いつくものを挙げてみます。
- わたしを離さないで(2010)
- 第9地区(2010)
- レポゼッション・メン(2010)
- ウォーリー (2008)
- アイ・アム・レジェンド (2007)
- アイランド (2005)
- マイノリティ・リポート (2002)
- リベリオン (2002)
- マトリックス(1999)
- ガタカ (1997)
- トータル・リコール (1990)
- 未来世紀ブラジル(1985)
- ブレードランナー(1982)
- マッドマックス2(1981)
- デス・レース2000(1975)
- ローラーボール(1975)※未見
- ウエストワールド (1973)
- ソイレント・グリーン (1973)
- 時計仕掛けのオレンジ(1971)
- 猿の惑星(1968)
- 渚にて (1959)※未見
こんなところでしょうか。
基本街は汚くて人が多く争いが絶えない。そして一部の人(企業)が支配する世界。
そこにどんなドラマを生み出すかが勝負ですが、その中でも本作の発想は非常にユニークだと思います。
さて、本作にかかわった人たちのその後ですが、監督のアルフォンソ・キュアロンはこの年「パリ、ジュテーム」で短編を発表した以降は作品を発表していません。プロデューサー業で活躍しているようです。
クライヴ・オーウェンはアクション映画俳優として「シューテム・アップ」「キラー・エリート(未見)」などで活躍。
作品に厚みを与える名優たちとして参加したジュリアン・ムーアとマイケル・ケインはその後も順調に出演作を重ねジュリアン・ムーアは「キッズ・オールライト」 マイケル・ケインはバッドマンシリーズでも存在感を示しています。
そしてマリアの再来のような存在だったクレア=ホープ・アシティですが、学業に専念するために休業しているそうです。
BDはまだ出ていませんが、DVDは随分と安くなっているのでメイキング見たさで買っちゃうかも
。
2006年ディストピアものの傑作。スクリーンで見る事ができてホントラッキーでした。
ちなみに隣の1番シアターではこんなのやってましたが、本作よりも客層が若くしかも観客が多そうでした。
キネカ大森が珍しく賑わってますヨ。