ゴーストライター(2010)/★★★★☆

的確な演出と名演技陣
ゴーストライター [Blu-ray]
ロマン・ポランスキーはこれが初めて?かも。
大監督にこんな事を言うのも変だとは思うが、その演出の的確さに驚いた。
例えば序盤の面接のシーンなど、セリフ・キャスティング・演出・美術・(照明?)が実にうまくて、この話(自叙伝の執筆)の胡散臭さ、依頼人たちの怪しさ、ユアン・マクレガーのハッタリを利かせる巧さや代理人のいい加減さなど、この物語の導入としては完璧に近い。
とにかく場の雰囲気作りと登場人物たちの描き方が抜群に巧い監督だなと感じた。
細かいカットを丹念に拾ってキチンと描くのだから、題材さえマッチすれば怖いものはない。


今回ヒッチコックタッチと言われ、政治スリラーものだが、サスペンスが足りないと感じた。ヒッチコック映画にありそうないやらしさやケレン味がなく、極めて真面目に物事が進んでいくために、ハラハラドキドキ感は薄いと思う。
逆にじっくり考える時間がある分だけ、観ていて「あーこれのために車じゃなくて自転車だったのね」とか「この展開にするために寝たの?」とか色々読んでしまうのだ。
これも、観ていて混乱しない演出の的確さ故とすれば皮肉な話である。


小道具としてカーナビの使い方には感心した。ただ主人公が正直すぎて、あっちでぺらぺら、こっちでペラペラしゃべるのは気に入らない。
原作があり(ロバート・ハリス)脚本にも参加してるとなれば仕方がないか。
あのエンディングは色々議論がありそうだが、私としては(ビックリはしたが)作りすぎ感があってあまり感心しない。普通に終わらせても十分楽しめたと思うのだが。


大好きなユアン・マクレガーが主演をしていて、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラ、オリヴィア・ウィリアムズと名演技合戦がたっぷり楽しめる。
今どき珍しい、きちんとしたミステリーが楽しめる作品だと思う。