ホワイトアウト(2009)/★★★

どっちつかずの演出とキャスティングで評価が下がる。
ホワイトアウト [DVD]
南極で起きた殺人事件に女FBI捜査官のケイト・ベッキンセイルが挑む。

「南極サスペンス」という設定を聞くとなかなか面白そうで、「エイリアン」「遊星からの物体X」などのモンスターものに振れてもいいし、「Xファイル」などのサスペンス風に行ってもいい。

要は南極という舞台がうまく生かされれば、いくらでも料理のし甲斐があると思ったのだが、出来上がったものは「2時間ドラマの南極版」といった趣で普通のサスペンスになってしまっている。


先に良いところを言うと、
飛行機に閉じ込められて絶体絶命にピンチを切り抜けるのアイデアが秀逸で、なるほどと思わせられる。
また、南極でグローブ(手袋)を忘れるとどうなるかとうエビソードは、ストーリー展開とも絡んで重要な場面になっているし、傷の特殊効果が素晴らしく、特にケイト・ベッキンセイルにつけた傷はどれも痛々しくドラマを盛り上げる。
(これが死体となると全然ダメなのが不思議なのだが)
そして、南極の場面も美しく、飛行シーンなど溜息がでるほどだ。


問題としては大きく2つある。
1つ目はアクションとサスペンスがどっちつかずということだ。

これはダークキャッスルという制作会社の性質と「60セカンズ」「ソードフィッシュ」とうアクションを強みとするドミニク・セナ監督の噛みあわせの悪さにあると思う。

たとえば、50年前の遭難事故が発端となっていて、序盤の盛り上がりにもなっているのだが、アクションにしては妙に長すぎて切れが悪い印象を受ける。
実はこの後で謎解きの一部として、これが再現(しかも解説)されるため、ある程度説明しておく必要があり、結果半端なアクション演出になってしまっていたと思われる。
また、そういったちぐはぐさが随所に見受けられ、

  • 主人公は2年の任期を終え、あと2日で帰還するという時に事件が起きるのだが、終盤であっさりと居残りを決めてしまう。
  • 数秒で凍りつく世界なのに、ドアをあけても見送るシーンがある。
  • 同じ理由で雪上での犯人との追いかけアクションがウソくさく見える

などなど。アクションなのかサスペンスなのか見ていて戸惑うことが多い。


問題の2つ目はキャスティング。
これが致命的なのが、これだけ綿密に組み上げたはずのシナリオなのに、キャスティングのせいで、登場した途端に一目で犯人が分かってしまうのだ。
実はこのキャスティングこそ最大のミスリードだろうと思っていると、終盤に本当に犯人として登場したときに、むしろビックリしたくらいだ。

サスペンスものである限り、犯人はだれかというのが最大の関心事になるが、逆に犯人に演技力がないと映画が台無しになるので、それなりのキャストをアサインするのは当然で、このあたりのバランスが難しいと思うが、登場人物が絞られる設定のなかで、このキャスティングでは「2時間ドラマ」と言われてもしあたあるまい。


ケイト・ベッキンセイルは意外と健闘していて、第2のジョディ・フォスターにもなれるとおもうのだが。