フロスト×ニクソン(2008)/★★★★☆

ロン・ハワードらしからぬ面白さ。
フロスト×ニクソン [DVD]
ロン・ハワードは私にとって「どうも合わない」監督の一人です。
作品のタイプが似ているのか『バリー・レヴィンソン』と比較する事が多いのですが、もう1つ踏み込みが足りないというか、エモーションがないというか、”とっつきやすいけどいいところでさらりと流してしまう”感があります。(「コクーン」「エドtv」「ビューティフル・マインド」「アポロ13」など)
むしろ「バックマン家の人々」「スプラッシュ」「ガン・ホー」「ラブ IN ニューヨーク」のような初期のライトコメディに本当の才能があるのではないでしょうか?(「ザ・ペーパー」なんて最高ですよ)


フロスト×ニクソン」は元が舞台劇だった事もあり、限定された場所、限定されたキャストで作られた低予算映画ですが、これが初期の頃に帰ったような、無類の面白さでした。
政治的な題材ではありますが、フロスト(マイケル・シーン)とニクソンフランク・ランジェラ)の人間性に当てられ、さらにインタビューを通した”男の勝負”の映画でもあります。


見ていて「アマデウス」を思い出しました。モーツアルトの軽薄さがむしろサリエリを引き立たせる。
本作のフロストも”ジャーナリスト”ではなく”役者”と言われており、最後にニクソンも「それが才能だ」とアドバイスしている。
これに対比するニクソンフランク・ランジェラがすごい。雰囲気がよく出ているんですな。
インタビューの前の一言の憎らしさ、滔々としゃべる姿には怒りすら湧きますが、それが最後のシーンに結びつく。うまいですね。


単調になりがちが室内劇をドキュメンタリー風に仕上げ、見るものをぐいぐい引っ張る演出は見事です。
2008年のアカデミー監督賞にもノミネートされました。


ただ1つだけ残念な点があります。
”一本の電話”という単語を見て、てっきりインタビューの最中に電話がかかってくるとばかり思っていたんです。
なので、最後はあれれっと思ううちに終わってしまいました。
まあ勘違いといえばそれまでなのですが、このあたりが先に情報が入ってしまうDVDユーザの泣き所ではあります。