ぐるりのこと/★★★★

終盤が奇妙な味わい
ぐるりのこと。 [DVD]
最初の二人の会話がやたらとリアルで、”こんなのを映画で見らせれても”と思ったが、この2人に不幸が降りかかってからはぐっとひきこまれた。
ただ、終盤が(ある意味)すごく奇妙で、普通ならここで終わるだろうというところを、何回かパスして"回復の物語"が続く。
まるで3種類のエンディングを見せられている気分だった。
脚本は監督でもある橋口亮輔。インタビューを読むと自身も自閉症にかかった時期があったという。自身の物語としてもここまで描かないと終わらなかったのだろう。それともこの人の作家性なのか?


法廷画家というアイデアは抜群で、とくにリリー・フランキーのリアクションショットが絶妙。(「裏窓」のジェームズ・スチュワート並と言えば言い過ぎか)ただし演技はそれほどうまいとは思わなかった。

それよりやたらと生真面目で”ああっ、こんな女(ひと)いるなぁ”と全国の亭主を震え上がらせる演技を披露した木村多江をたたえたい。後半は回復の物語なのに全然治っているように見えない”不幸な女”をやらせたら日本一の女優ですな。