ピンクの豹(1963)/★★★★

いろいろと興味深い作品でした
ピンクの豹 [DVD]
ピンクパンサーシリーズ第1作。
63年の作品なのであまり期待せずに見たのですが、いやー面白かった。
コメディというよりロマンティック・ラブストーリーといった趣でした。
怪盗ファントム(デヴィッド・ニーヴン)と世界一の宝石(ピンクパンサー)を持つインド?の王女ダーラ(クラウディア・カルディナーレ)の恋の駆け引きがお話の中心。
(虎の敷物をはさんで、ジャンパンを飲みながら会話する場面が延々と撮られていたります)


そこに絡むのがクローゾー警部(ピーター・セラーズ)なのですが、この頃はまだキャラが確立していいないので、オーバーアクトぎりぎりで、本人もどこまでやっていいか迷いながら演じてる雰囲気があります。
※このあたりはピーター・セラーズの人生を描いた映画「ピーター・セラーズの愛し方 ~ライフ・イズ・コメディ ! 」にも出てきます。(最初の地球儀の場面を思い切って演じて監督を驚かせるシーンなど)


ものすごく変なのが、クルーゾー夫人(キャプシーヌ)の設定。
実は怪盗ファントムの愛人で、クルーゾー警部とは偽装結婚している。
作中でも夜になってクルーゾーが迫ると「寒いわ。毛布とってきて」とか「熱いミルクが飲みたいの」とかいって逃げちゃう場面がコメディとして描かれています。
まあ、当時はそれが面白かったのでしょうが、現代ではとても考えられない設定なので、見ていて不快感しかありません。
(しかも裁判の場面で「結婚生活10年」と言ってるので、いくらなんでもそれはないだろうと)


興味深いのは、本作で後のギャグがすでに出てくるんですね。甲冑を着たり、いざというとき服が脱げなかったり、ベッドルームでの人物の配置だったりとか。「3」ではギャグとして昇華されている元ネタがかなり出てきます。

あと、オープニングのピンクパンサーは、この頃は「いぢめられる(M)」側です。「3」ではクルーゾーをいぢめる(ドS)に変わっています。


そしてなんといっても楽しいのが、ヘンリー・マンシーニの音楽。その雰囲気がいいんですよね。エレガントでノスタルジックで。
コミカルだけど洒脱。もろ私の琴線に触れてくるサウンドです。


極め付けはクラウディア・カルディナーレが歌う「今宵を楽しく(It Had Better Be Tonight)」。最高です。
昔の映画ってこういったおまけがよく付いてきます。
これは嬉しい贈り物でした。
■Meglio Stasera(It Had Better Be Tonight)歌:フラン・ジェフリーズ

歌い終わりのセラーズに注目。変に素人くさいというか照れながらやっているのがわかります。


テンポは緩いしギャグも少ないしで、今見るとどうかと思う作品ですが、私はすごく楽しく見ることができました。