イカとクジラ(2006)/★★★★

離婚は「崩壊」か「成長」か?
イカとクジラ [DVD]
舞台が1986年と聞いて、ちょっと前のような気がしていましたが、コナーズだのマッケンローだのという会話を聞いて、おやっと思ったら、なんと20も年前の話でした。


両親が離婚し「共同監護」(お互いの家で子供が生活をする)という形で新しい生活がはじまった。長男は母親に原因があったとして責めるが、自分も学園祭に盗作した歌を歌うし、弟も学校で問題を起こす。そんなだれもが不完全で不安定な家族の様子をシニカルに描く。


基本的にエピソードの積み重ねなので、これといったドラマはありませんが、それがかえって身近な問題として感じられました。
私は(父親ではなく)長男に感情移入しました。この状況だとやっぱ母親を責めるよなぁと。
この長男(ジェシー・アイゼンバーグ)は誰かに似ているなと思ったら、嵐の二宮クンに似てるんですよ。顔はあまり似ていないのですが、ちょっとした仕草や上目遣いの雰囲気がよく似ていました。


DVD特典のインタビューでローラ・リニーが「子供が成長するにつれ、親も成長していく。この母親は家を出る時期だったのではないか?」と言っています。
夫の影響で自分も作家として活動するうちに、妻の方が売れてしまう。それが"家族"という単位を見直すことになっても仕方がない。といっているように見えました。
※夫の助言を受け入れず自分のやり方で作品を作る辺りの会話など、まさに作家同士の意地のぶつかり合いという感じでした。


子供だけでなく親も成長するその過程で"離婚"というのは十分ありうるんだ。というメッセージは、最後の「イカとクジラ」の展示物に象徴されていると思います。
親がクジラで子がイカなのか、父親がクジラで母親がイカなのか。
子供の頃、怖くて指の間からそっと見ていた光景が実は自分の家庭にもあって、それを恐れず受け入れる気持ちがラストシーンに繋がっていると感じました。


脚本・監督はノア・バームバック(「ライフ・アクアティック」)。奥さんは ジェニファー・ジェイソン・リー (「ルームメイト」)。本作ではウェス・アンダーソン(「ライフ・アクアティック」)が製作を務めています。


離婚による家族の新しい生き方を「家族の崩壊」とせす、「4人の(家族の)成長」と捉えたところが、新しいと思います。