オール・ザット・ジャズ(1979)/★★★★★

ひねたオッサンがくねくね踊るへそ曲がりミュージカル。でも愛おしい。
オール・ザット・ジャズ [DVD]
「まるで出来の悪いフェリーニ作品のようだ」と評された文章を見たことがあります。


私が映画館で映画を見始めたのは1977年からで、すでにミュージカル映画は廃れたジャンルでした。
(「ウエスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」などの名作が作られたのは10年以上前の話です)

当時ボブ・フォッシーの功績は全く知らず、「キス・ミー・ケイト(53)」の出演も「キャバレー (72)」(未見)や「レニー・ブルース(74)」(未見)の監督も知りませんでした。

目の下に隈を作って、神経質でいつも咥えタバコのおっさんがぴっちりタイツでエロい踊りを踊る映画くらいしか印象がありませんでしたが、音楽はなぜか気に入って、サントラは擦り切れるほど聞きました。
今回、再見して映像は忘れていましたが、音楽は全部覚えていました。


ストーリーは人気演出家ギデオン(ロイ・シャイダー)の晩年を幻想的に描いており、B・フォッシー監督の自伝的作品と言われています。
映画の中でも出てきますが、本作自体が凄く凝った演出で、実に丹念にカットを拾っている点は改めて感心しました。フォッシーは本当に神経質で努力家なんだと思います。


本作の見所は、憔悴しきったロイ・シャイダーの鬼気迫る演技とジャズ風の音楽、それにダンスシーンでしょうか?。(私は妻と愛人と娘がそれぞれ唄い踊る場面が好きです)
さらに言えば自分自身をさらけ出さずにはいられなかったフォッシーの狂気が感じられます。
映画ではシャイダーがあっけなく亡くなりますが、本作でアカデミー賞ノミネートやカンヌ映画祭でグランプリ賞を受賞し、7年後の1987年に自身も亡くなっています。


私にとってはすごく愛おしい映画です。


余談ですが、本作に出てくる奥さんは「くたばれ!ヤンキース 」で魔女をやっていたグウェン・ヴァードンであることをコメンタリを聞いていて気がつきました。
実際に撮影現場にも来たそうですが、本当に映画のようにフォッシーはいちいち意見を求めていたそうです。