パピヨン(1973)/★★★★★

"くさいメシ"はゴキブリとムカデ。男だったらこれを見ろ!
パピヨン [DVD]
太陽がいっぱい」を観てからというものずっとそのテーマ曲が頭の中を流れていますが、時々「パピヨン」のテーマがそこに混じってしまいます。というこで、久しぶりに再見しました。


胸に蝶の刺青があるパピヨン(スティーブ・マックイーン)と偽札作りの名人ドガ(ダスティン・ホフマン)は南米仏領ギアナの監獄に送れらる船の中で、「パピヨンが身の安全を保障する代わりにドガが脱獄資金を提供する」という約束をした。
ギアナの監獄で待ち受けていたのは、ジャングルでの強制労働と脱走囚への厳しい処罰。それは「1度でも脱走すると独房に2年。その次は5年の禁固刑。さらに刑期が倍になる」というものだった。
過酷な労働に耐えるパピヨンドガ。しかしドガのミスをかばうためにパピヨンは独房に入れられてしまう。
ドガの買収による差し入れで一時元気が回復するものの、それががバレて「差し入れた相手を吐かなければ、食事は半分。檻は密閉」という処分を申し渡される。極限の状態に置かれるパピヨン。しかし、なんとか耐え抜き2年の期間が過ぎる。
固い友情で結ばれるドガパピヨン。そしてとうとう脱獄のチャンスがめぐってきた・・・。


独房のマックイーンといえば「大脱走」を思い出しますが、こちらはとにかく悲惨の一言。ほとんど光の入らない独房で見る見る衰弱する姿と「俺は負けない」といいながら、虫を食べてしのぐシーンが特に印象に残ります。だんだん精気が抜け落ちていくマックイーンのメイクと鬼気迫る演技。衰弱しきって、一度はドガの事を話そうと所長を呼び出しますが「どうも名前が思い出せねぇんだ。ダンナ。ホントだよ。」と情けない声で告白します。
もう、マックイーンは神


この映画では独房で飢えをしのぐために、虫(ゴキブリやムカデ)を食べるシーンがあります。子供の頃、テレビで見て以来すっかりトラウマになり、悪いことをすると、ゴキブリを食べさせられるとずっと信じてました。(ある意味いいトラウマ?)。
私が道を踏み外さなかったのも、この映画のおかげがだと思います。


最近の脱獄物では「ショーシャンクの空に」が人気が高いようですが、やはりゴキブリを食わない奴は脱獄しちゃいけないと思うので、どうも物足りなく感じます。やはり脱獄は"椰子の実"で「おれはくたばらねー!」と叫ばないと。ちなみにパピヨンとはフラン語で蝶のこと。つまり「自由」を意味しているわけですね。胸に自由を刻んだ男は決してあきらめることなく自由を追い求める。素晴らしいです。


ダスティン・ホフマンも共演してますが、どちらかと言うと脇役で、マックイーンの「動」に対して、ホフマンの「静」。見事な対比になっており、特にラストシーンで首をかしげながら見送る姿が忘れられません。

■原作その他

この壮絶な話は実話だそうで、原作は15年の刑期を耐え抜き脱獄に成功したアンリ・シャリエール本人。DVDの特典ではアンリ・シャリエールが演技指導をしている姿を見ることが出来ます。
脚本はダルトン・トランボ(「ローマの休日」「 スパルタカス」「 ジョニーは戦場へ行った」)とロレンツォ・センプル・Jr(「ハーパー探偵シリーズ/新・動く標的」「コンドル」「キングコング 」)。
監督は私の大好きなフランクリン・J・シャフナー。「猿の惑星」「パットン大戦車軍団」「ブラジルから来た少年」。作品は少ないのですが、傑作ばかり撮っている監督さんです。


太陽がいっぱい」と混同してしまう音楽はジェリー・ゴールドスミス。ほとんど音楽がない映画ですが、テーマ曲が形を変えて何度も繰り返され、エンディングで一気に胸を打つようなスコアになっていました。


今の人からみると、後半がダレるとか、実話にしてはありえない、とか思われるかもしれませんが、私は2時間30分の長尺をずっと息を凝らして見つめ続けることができました。
私はこれが脱獄物の最高傑作だと固く信じています。