リトル・ミス・サンシャイン(2006)/★★★★☆

"負け犬"家族賛歌。よく出来た佳作。
リトル・ミス・サンシャイン [DVD]
私のツボなのはわかっていたのですが、あまりにも評価が高すぎて過度の期待は禁物と言い聞かせながら鑑賞しました。
結果は確かに良かったけど多少の粗も目に付くので、満点とは言いがたい。とてもよく出来た佳作ってところじゃないでしょうか。


本作の肝はなんと言っても脚本だと思います。おんぼろバスに乗って家族が娘のミスコンに参加する。ってアイデアを見つけた段階で"勝ち"だと思います。
どうやって家族全員をバスに乗せるのかなと思っていたのですが、自殺未遂した義理の兄(スティーヴ・カレル)が出てきたところで、なるほどと思いました。その後の食事のシーンで家族関係がわかってしまうところは実にうまい。
ただ"バスで"って言うところが少々弱いと思います。そのほかに警官のくだりも弱いし、ミスコンの場面も別の持って行きようがあったと思いました。


よく練られていると思うのは、確信犯的にミスリードさせている点です。
後半の衝撃的な出来事は絶対に嘘だと思いましたもん。わざと"その姿"を見せないのは意図的ですよね。シルクハットはタップダンスだと思わせるための小道具だし、視力測定もうまい。あとバスを押させるあたりもうまいのですが、さらに故障させるあたりも上手だと思います。(これが原因で警官に止められるというおまけつき)。
よく練りこまれた脚本というのは観ていて気持ちがいいものです。

■名優たち

こんな地味な話で知名度も低いのに、この脚本の素晴らしさを見抜いた出演者たちの目の確かさには感心しました。けん引役は製作のマーク・タートルトーブだとか。
妹のアビゲイル・ブレスリンや兄のポール・ダノもいいのですが、なんと言ってもお父さんのグレッグ・キニアがうまい。ミスコンでのリアクション・ショットだけでも見る価値があると思います。
また個性的な家族をまとめるお母さん(トニ・コレット)にも拍手。彼女のしっかりした芯がないとこの話は成立しないと思います。(バスに乗り込むたくましい姿も印象的でした)。
意外と儲け役だったのはおじいちゃんのアラン・アーキン。オスカーも受賞しましたが、ドラック中毒のスケベおじいちゃんというのはやり甲斐もあったのではないでしょうか?

■印象に残るビジュアル

監督はジョナサン・デイトンヴァレリー・ファリス。名字は違うけど夫婦だそうです。おんぼろバスの造形やスクーターに乗ったグレッグ・キニアもいいのですが、このシーンが最高ですね。

ということで、心温まる家族のロードムービーとして末永く愛される作品だと思います。
こうゆうのは知る人ぞ知るってくらいがいいと思うんですが、オスカー作品賞候補というはちょっと。