ザッツ・エンタテインメント/★★★★

ひたすらうっとり
ザッツ・エンタテインメント [DVD]
私が映画を見始めた頃には、ミュージカルはすっかり廃れていて、劇場で最初に見たのはヒネたオッサンが煙草をくわえながら踊る「オール・ザット・ジャズ」からだった。
だからここに登場するほとんどの場面は「過去にスクリーンを飾った名人たちの至芸」でしかない。
さらに出会いが悪かったせいか、あまりミュージカルには関心が持てず、60年代以降の「サウンド・オブ・ミュージック」や「ウエスト・サイド物語」を追いかけるぐらい。黄金期時代の作品で観たのは「雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」ぐらいか?
本作も昔に見たことはあったが、今回改めて見て、やはり凄いと思うし、うっとりする場面が目白押しだと思う。

ただ、正直に言うと、オリジナルよりその場面を引用した70年代以降の映画の方が思い出すことが多く、”虹の彼方に”は「アリスの恋」のオープニングで使われたなぁとか、この曲CMでよく聞くなぁとかオリジナルよりコピーの方が感慨深いのがちと悲しい。


本作では、フレッド・アステアは優雅に踊り、 ジーン・ケリーは豪快に踊る。エスター・ウイリアムスは泳ぎがうまいし、フランク・シナトラは歌が上手。ジュディ・ガーランドは子役時代から出演を続け実に芸歴の長い女優さん。
それぞれの特徴がよく出るように編集されていて面白かった。(ジュディ・ガーランドモンタージュは私も泣きました)
ミュージカル慣れしていないからか「実に洗練された踊りです」と言われてもピンと来ないが、”帽子掛けと踊ったり””部屋の中をぐるぐる回りながら踊る”姿は、純粋に楽しい。
あーん。もっとミュージカル見ないとダメだよね。と思いました。(PERT2、3も観ようっと>そうじゃないって!)


ところで、MGM(=ミュージカル)の最高傑作って「巴里のアメリカ人」なの?


本作の魅力のもう1つは、往年のスター達のコメント。
「あの当時は誰も彼もが歌わされた」とか「(吹き替えでなく)自前の歌声を流すことをスタジオが許した(見逃した)」とか、役者とスタジオの関係を垣間見せるセリフも多いし、斜に構えた言い回しも大スターが語るとお洒落に聞こえるから不思議だ。