イヌゴエ/★★★☆

観ていて心地よい作品でした
イヌゴエ [DVD]
インディペンデント(低予算)映画は、アイデアとセンスが命。本作ではイヌの話しが聞こえるというアイデアもいいが、独特のテンポで見せる演出のセンスがよかった。

この設定のミソは(洋画によくあるような)人間との会話にならず、あくまでもイヌの独り言である点と、関西のおっさん風の声である点だ。この設定のおかげで、セリフが妙にリアルに聞こえ、観る側からすると「いつしゃべるか」という興味が途切ず、つい画面に引き込まれる効果が出ている。


ただし、SF的な設定ではあるが、お話自体は実に平凡。
匂いに敏感な冴えない男が恋人にフラれ、イヌの散歩で出会った美少女に恋をするだけの話だが、この力の影響で引っ込み思案だった青年が、だんだんとポジティブ人間になっていくのが実に自然に描かれていて好感が持てる。(「それって君のキャラじゃないでしょ!」と上司に言われ、ふと我に返ったように「あれ?オレ何やってんだ?」と言いつつまた反抗する姿にくすくす笑いがこぼれました)
また、音楽もウクレレ?によるテーマ曲が1つだけだが、メロディがいいのと、ここぞ!というときに効果的に使われており、かなり作品世界を盛り上げるのに成功している。


ちょっとウェス・アンダーソン(「天才マックスの世界」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」)を思わせるテイストが観ていて心地よい作品でした。


1つないものねだりをすると、ここまでこじんまりしていると”自主映画”と変わらないので、何か1つでも豪華なものが欲しかった。
例えば「未来世紀ブラジル」や「猟奇的な彼女」のように夢の中ではヒーローになるとか、「天才マックスの世界」のように劇中劇がやたらと凝っていたりとか。本筋には関係ないけどすぐに頭に浮かぶような絵が欲しかった。
いや、それが本作では新潟ロケなんですといわれると、さすがに邦画と言えども寂しすぎる。


なお、本作の続きでテレビドラマや映画化第2弾(「イヌゴエ 幸せの肉球」)も作られているようだが、私はイヌというよりこの作品のテイストが好きなので、あまりみたいとは思わない。