ホテル・ルワンダ/★★★★★

これは「ドキュメンタリ」か「映画」か?
ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション [DVD]
私はこの作品は「映画」だと思う。もちろん真実にもとづいているのはわかるが、どこか作り手のまなざしが暖かいながらも引いている気がするからだ。
実際、大量の死体が出てくるのに生理的な嫌悪感を及ぼすような表現は注意深く排除されているし、 唯一ドン・チードルが冷静さを失うシーンでもキャメラは一歩引いて写し出す。また前述のドン・チードルをはじめとして、ジャン・レノニック・ノルティホアキン・フェニックスといったキャスティングも映画として成立させることを優先した結果だろう。

逆を言えば、当事者(ルワンダ人)でない西欧人が作っていることが、本編の内容と二重写しになっている。
10数年前にアフリカのある国で部族間の内戦により大虐殺は行われ、西欧諸国はそれを容認した。その事実を西欧資本による西欧人の手で映像化され、こうして私たちは観ている。つまりはそうゆう事だと思う。

ともすれば、独りよがりな告発映画やモンド映画になりがちな題材を扱っていながら、映画としてきちんと成立させた。その根底にあるのは、”自分たちはあくまでも部外者である”と言う作り手の立ち位置の確かさと、静かな怒りだと思う。

観ていて「サルバドル」を思い出したが、まだ未見の「シンドラーのリスト」や「キリングフィールド」も観てから、もう一度この映画のことを考えたいと思った。