告白(2010)/★★★

マジで観ちゃだめです。
告白 【DVD特別価格版】 [DVD]
「この映画の評価は真っ二つに分かれる。そして映画好きほど評判が悪い。この映画は『映画』へのリスペクトがまったくないからだ」と評されていたのが印象的な本作です。

観ていてなんとなく言わんとすることが分るような気がします。

つまり、ショッキングな内容と映像のほとんどがアップとスローで構成されていて、観る側の感情を刺激することだけに特化された「高揚映画」だからですね。

映画がエモーションを生み出す道具というのは分りますが、なんか観ていて実験台にされているような気分になってきました。
原作は未読ですが、ショッキングな内容や巧みなストーリーテリングは原作譲りなのでしょう。ただ文章であればうまいなぁで済むものが、こうして映像にされるとさすがに鼻白むものがあるというか。引いてしまいます。

中島監督は大好きな監督なのですが「嫌われ松子の一生」のコメンタリの毒づきっぷりにへきへきした経験を踏まえて言うと、教育現場とか少年法とかへの問題提起より内容のショッキングさに惹かれて「最低の出来事」を「最高の明るさ」で語る手法をさらに洗練することを思いついたのではないでしょうか?

開巻30分の告白シーンで繰り広げられる悪意と憎悪の毒気に当てられた人には申し訳ないけど、実際に中2の息子を持つ経験を踏まえて言うと、実際はこんなことないから。こんな中学生いないし。授業中に堂々といじめが行われたり先生の話を聞かなかったり携帯メール打ったりしてないから。もっと素朴だし純真ですよ。中学生は。しょせん子供なんだって。
ただ、体だけはでかいです。大人よりでかいし力もある。体だけが大人なんです。

その意味で、この映画を見て本気で教育だの少年法だの過保護だのを語っちゃだめだし、その文脈で傑作と言われること自体に危惧を覚えます。


ただこれを純粋に映画としてみると、凄く凝っていて楽しめる作品になっていると思います。CGなんて最後ぐらいしか使ってないように見えますが、ホントはCGのない場面がないくらいいじってる気がします。
水たまりに踏み込んだ足と飛び散るしぶき。流れる雲。色を落とした画調。それとわからず色んなものが加工されてる気がします。
CGの使い方がロバート・ゼメキスの「キャスト・アウェイ 」的というか、本当に見せたいものを表現するためにCGを使う感じが似ていると思いました。

もう1つ似ていると思ったのが「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Airまごころを、君に (1997) 」。
ラストの「きもちわる〜い」と本作の「なーんちゃって」ってその使われ方といい、ニュアンスといいそっくりです。
劇中にクラシックが使われたり、ショッキングな表現がワザと使われたりするあたりも似ていて、本作の熱狂的ともいえるヒットぶりを聞くにつけエヴァ的なものを感じざるを得ません。


庵野監督と中島監督って風貌も似ているんですが、手法も似てきたんじゃないかと思います。