カラフル(2010)/★★★☆

一見フツーのいい映画だが。
Colorful オリジナル・サウンドトラック
この映画の存在は細田守監督のツイッターで知りました。

原恵一監督「カラフル」!試写で観た!素晴らしい!!すんばらしい!!!みんな観るべきですよ!!

手放しに素晴らしいと思える映画があるというのは、マジで貴重だと思います。

これを見た瞬間見に行くことを決めました。内容なんか全く知らないうちに。
近所で公開しているのはTOHOシネマズしかなかったので、前売りを買いに行きました。
まだ7月の上旬のことです。

ウチには中1と小2の息子がいるのですが、特に長男には原 監督のメッセージを劇場で感じて欲しいと思い、足を運びました。



見た直後の感想としては「フツーにいい映画。なぜアニメ?」でした。
著名人の言う"絶賛"ポイントが分かりません。
逆に、描写的に"特撮(=アニメ)"表現が一切ない(見事なくらい)ので、観ていてこれがアニメであることを全く意識しないのが売りなのかなとも思いました。


原監督に期待するものといえば、「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」や「アッパレ!戦国大合戦」(と「嵐を呼ぶジャングル」)のような、荒唐無稽でありながらどこか地に足の着いたコメディを期待するのですが、フリーランスになってからの「河童のクゥと夏休み」や本作のような地味な作品を作り続けています。



一度死んだ少年に別に魂が入り込むと聞いて思い出すのは「天国からきたチャンピオン」であり「素晴らしき哉、人生」のような、コメディのようなタッチでありながら、最後はほろっとさせるようなものを想像していたのですが、本作はずっとシリアスで"アニメ版「中学生日記」"のような作品でした。特に前半の主人公が周りに対して拒絶し続ける展開は観ていてつらいものがあります。

以下、ネタバレ


この映画で一番感心したのは、死ぬ前の記憶を失っていたためマコトの「自殺」経ていかに家族が変ったかをマコト本人(=観客)が知らないという点です。
途中でマコトが「フツーにいい家族なのになんで自殺したんだろう」という疑問が最後に明かされます。
つまり自殺によってフツーの家族になったんだと。
いつも遅く帰ってくる父と出来合いのオカズばっかりだった母。ほとんど家族と顔を合わせない兄がマコトの一件以来変ったんだと。
さらに、母が病んでいった背景には、「ありがとう」も言わずに去ってしまった祖母との関係も語られます。
もう、大人は号泣ですよね。
その意味では、随分と大人向けの内容だと思いました。



逆にピンと来ないのは、マコトがひろかに「人間は一色でなくていいんだよ」と言う場面が唐突に感じられる点です。
その前に親友となる早乙女君との廃線めぐりとか、お見舞いに来た唱子とのいきさつなどがありますが、それにしても唐突過ぎる。もっと吹っ切れる何か(出来事でなく表現)が欲しかったと思います。
それと、自殺の原因となった2つショックな光景ですが、どうもテーマ的に苦手なのか、ただの過ちには感じられません。これが「万引き」ぐらいだったら、もうやめなよと言ってあげられるのですが、不倫と援助交際という「性」を扱っている故に私の方が拒絶反応を起こしてしまいそうです。
(白いシーツの上の漂う手という表現だけで、嫌悪感を表したのは秀逸でした)



母親の不倫とか、友達の援交がテーマだけになかなか息子と話をする度胸がないのですが、ちょっと聞いた感じだと、早乙女君とのの件がよかったと言っていました。
親からすると、「自殺はするな」とか「友達は作っておけ」とか色々と言いたいことはありますが、少しでも心に残ってくれたらいいなと思います。


関連リンク
■お気に入り..原恵一監督最新作『カラフル』感想まとめ
http://togetter.com/li/30807

原恵一監督、麻生久美子 インタビュー
http://www.cinematoday.jp/page/A0002684

■日本アニメの旗手が放つ最新作
 映画『カラフル』誕生秘話
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/982
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/984
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/986