プリンセスと魔法のキス(2009)/★★★★☆

見ていてたのしー!傑作ミュージカル。
プリンセスと魔法のキス [DVD]
あまり話題になっていませんでしたが、これって凄くないですか。
特に開巻10分の描写。

白人と黒人の女の子が「プリンセスとカエル」の絵本を黒人の女性に読んでもらっています。カエルの王子にキスするかしないかで2人は口論します。
姉妹なのかな?双子なのかな?と思っていると白人の父親が帰って来ます。
家族が揃ったと思ったら、黒人の女性は黒人の女の子の手を引いて家を出て電車に乗ります。
そう、主人公は黒人の女の子だったのです。ものすごいミスリード

さらに家で夕食を作っていると黒人の父親が帰ってきます。料理の味付けは娘がします。父親は出来上がった料理を近所に振舞う事をします。玄関に集まってみんなで美味しく頂く夕食の風景。
父親の夢は自分の料理店を持つことです。その夢に夢中になる娘に言います。「いいかい、決して大事なものを見失わないと約束してくれ」

娘が自分の部屋で寝ようとするとベランダにカエルが飛び込みます。たとえ王子でもカエルにキスなんかしないと言っていた娘は「おおいやだ!キスなんて」と言うと、カエルが自分に向かってジャンプします。あわてて自分の部屋から飛び出す女の子。
次に部屋に入るときは成長して綺麗な娘に育っています。ウエートレスの格好をして「今日のチップは少ないけど」と言いながら貯金します。貯金箱の脇には父親の写真。そう父親は亡くなったのです。
ウエートレス姿のままベッドに倒れこんだ次のカットでは目覚ましが鳴り、(足で音を止めながら)次の仕事に出勤していきます。

ここまでで大体10分。これらの全てがこれ以降の物語に影響を与えます。
全てですよ。全部伏線。無駄なセリフは言うに及ばず、無駄な描写すら一切無し。
カールじいさんの空飛ぶ家」の開巻が話題になりましたが、凝縮度とテンポでいったらこちらの方が上だと思います。


お話は典型的なディズニーモノに則っているし、最後はちゃんとハッピーエンドなので安心して観る事が出来ます。

ただし、この作品でディズニーの本気度が分かります。

黒人で前向きなヒロイン。軽薄な王子。劇中のほとんどがカエルとして描かれる主人公達。男気にあふれるお供。実はいい奴だった親友。スピーディーな展開。美しく華やかな画面。躍動感あふれるアニメーションとこれでもかのデフォルメ。途切れることの無い音楽。ジャズ。ゴージャスなミュージカル。南部の風景。


ただ1点。注文を付けるとすれば、耳に残るナンバーが1曲でもいいから欲しかった。それがあれば満点です。


もう、最初から最後まで”たのしー!”を感じさせる傑作アニメでした。見てよかったです。