正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官(2009)/★★★★

TVドラマのような作りだが十分に見る価値がある
正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 [DVD]
ネタばれ、ご注意!
予告編をみるとハリソン・フォードが全面に出ていて、まるでハリソン・フォード主演作のような印象だったが、実際は群像劇モノで人種問題をテーマにした群像劇の「クラッシュ」に近い。


序盤のシークエンス(アリシー・ブラガのメキシコ不法移民で子供を預けたままで強制退去させられる)を見たとき、正直「うわー!」と声を挙げてしまった。(子供を託児所に預けたままで、国外に強制送還って、どんだけ!)

ほっとけないハリソン・フォードが翌日に子供引き取って、メキシコの実家まで届けた時、「娘は息子を探しに昨夜また不法入国に行った」と聞かされる。


次のエピソード。
バングラデシュ少女が「9.11テロ犯にも言いたいことがある」と高校の授業で作文を発表すると、その夜にFBIが来て強制捜査&即逮捕。
こんな話ホンマにあるんかいなという批評も見たが、私はアリだと思う。
この少女が自爆テロをするとは思えないが、これはある意味”弾圧”なんだろうと。
「扉をたたく人」でもちょっとした犯罪で逮捕され、そのまま国外に退去させられる話だった。
今、アメリカでは見た目がイスラム系というだけで無形の迫害・弾圧を受けているようだ。


と、ここまでは良かったが、あとのエビソードがいけない。
グリーンカード欲しさに体を提供する女優の卵と途中で惚れてしまう審査官だの、はねっかえりの妹の行動を許せない親父と息子の犯罪だの、コンビニ強盗仲間に巻き込まれる韓国青年だの、どこか甘さが感じられるエビソードが多い。
(コンビニの場面はなかなか感動的だが、全体的に甘さがあるのでパンチが効いてない)


映画という意味では、最初の2エビソードのように、もっと悲惨さに徹してほしかったが、バランスをとるようにいい話も入れたため、テレビドラマのような軽さになってしまった。


年老いたハリソン・フォードの演技がいい。とても同年に”インディ・ジョーンズ”を撮ったとは思えない変貌ぶりが素晴らしい。
レイ・リオッタアシュレイ・ジャッドも悪くないが、生かしきれてない印象。
それより、移民の当事者たちである俳優たちが素晴らしく、とても演技とは思えないリアルさが胸に迫る(ただし韓国青年以外)。

今のアメリカを知る上で、これは見る価値があると思う。