ミルク(2009)/★★★★

終始圧倒されました
ミルク [DVD]
自らもゲイであることをカミング・アウトした、ガス・ヴァン・サント作品。
主演のショーン・ペンが主演男優賞を受賞。

実録物なのでその背景に関しては余り詳しく語られず、もっぱら起きた出来事や周りの様子が映し出されます。
なので、見ていてもよくわからない所が多いのも事実。でも終始圧倒され続けました。
特に感心したのが、「適度な不快感」「つなぎ目の無い再現性」「"ミルク"という人物の複雑さ」の3つです。


「適度な不快感」とはずばり"ゲイ"シーン。裸のからみこそないもの、多くの人には不快に映るでしょう。
しかもこれが3回ぐらい出てきて、序盤の嫌ーなカラミと中盤の自堕落なカラミさらにクライマックスでも再現シーンが出てきます。
この適度な不快感さが"ミルク"がどのような人であったかを見る人に思い出させる効果を出しています。

■映画『ミルク』 ショーン・ペンの提案でラブシーン追加していた
http://gayjapannews.com/news2008/news139.htm


2つ目の「つなぎ目の無い再現性」は、当時の再現フィルムとショーン・ペンの出演場面が実にシームレスに繋がっています。
本当にそこにいたかのような再現性は、あまりに自然で驚きました。

■ポータブルなHD編集システムで、映画『ミルク』を完成
http://www.avid.co.jp/jp/showcase/3588.asp


3つめが「"ミルク"という人物の複雑さ」
"ゲイ"である以前に「ハーヴェイ・ミルク」という人物が、いかに多くの顔を持ち複雑な人間であったかが、ショーン・ペンによって演じられます。
「政治家としての狡猾な顔」「政略家としての計算高い顔」「ゲイとしてだらしない顔」「マイノリティとして虐げられた顔」
一時として同じ顔を持たず、まるで猫の目のようにくるくると表情を変えていくショーン・ペンの複雑さに感心しました。
ただのゲイでもなく、ただの政治家でもない。そんなミルクを体現したショーン・ペンの演技は一見の価値ありです。
前の年の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ=ルイス続く、アカデミー主演男優賞も納得の演技だと思います。