姉のいた夏、いない夏(2001)/★★★

思わせぶりな自分探しの旅は心に響かず
姉のいた夏、いない夏 [DVD]
午後のロードショーの”家族の絆”特集。
オリジナルが93分なので、ほぼノーカット(のはず)。

画家の夢を捨て、家族のために大会社に就職したが、白血病で亡くなった父。
その父に溺愛された姉もやがてヨーロッパの地で投身自殺をする。
母と2人残された妹は姉の自殺の真実を探す旅に出る。


姉の足跡を辿る旅だが本当の目的は「自分探し」。父、姉、そして母からも見捨てられそうになった時、妹は姉の足跡を辿ることによって、本当に自分が大事にしていたものが何だったのか見つめ直すたびに出る。
それは後半から妹の物語に変わってゆくあたりで徐々に示され、終盤の「私はここにいる」というセリフと、ラストシーンのかくれんぼで自分から出て行く姿で明示される。

”自殺した姉の足跡を辿る旅”と聞いて思い浮かべるのが、村上春樹の小説「ノルウェイの森」。あるいは、その他の一連の作品でもいい。
それと比べると本作の”弱さ”が判るだろう。
こういった映画はもっとディテールが豊かでないと心に響いてこない。
本筋とは全く関係ないけど、「妹の心象」として映ったものを細かく積み上げていくことによって、彼女の気持ちが観客にも伝わっていく。彼女の目に何が入り何が入らないのか。その取捨選択が大事なのだ。
その意味では、関わる人が少なすぎるし、エピソードも足りない。
さらに、深刻一辺倒で根本的にユーモアが全くない。(これが一番の致命傷だと思う)。

ただし、よかった部分もある。舞台がヨーロッパなので美しい風景が楽しめるし、1960〜70年のテイストも嬉しい。また自己破滅していくキャメロン・ディアスの演技は出色だと思う。


監督は「ウィンブルドン」や「ブリジット・ジョーンズの日記」の脚本家アダム・ブルックス
自分の手で映像化したかった気持ちはわかるが、残念ながら成功しているとは言えないと思う。

原題は「THE INVISIBLE CIRCUS」。『インヴィジブル・サーカス』として原作が出版されている。
タイトルから察すると途中で出てくるサーカス芸人達がもう1つのテーマだと思われるが、映画では1シーンしか出てこない。