ノー・マンズ・ランド(2001)/★★★★

見ている間は思い切り笑い、その後でゾッとする。
ノー・マンズ・ランド [DVD]
TV放送かつ吹き替えでの鑑賞です。


さらっと見せるのに、ものすごい奥が深い。そんな風に感じました。終盤の皮肉な展開とラストシーンが圧倒的。特に最後は遠景で爆風を見せるのかと思ったら、俯瞰で終わってました。一体この後どうなるんでしょう。


今までの戦争映画では「敵と味方」の姿を描いてきましたが、この映画では第3者(国連軍やマスコミ)の存在が目を引きます。
もはや従来の「戦争」など存在せず、「近親憎悪のような地域紛争」しかないのかもしれません。そのとき当事者でない我々はどうすればよいのでしょう?
国連軍の「お待ちください。事態は非常に複雑なんです」というセリフは、自分たちが物事を複雑にしている事への痛烈な皮肉を感じます。


異常な状況に陥った当事者たちは、いったんは和解の姿勢を見せますが、結局個人的な感情のもつれから本当の敵同士になっていく姿を見るにつけ、色々考えさせられてしまいました。

■笑えるセリフ

上官「何かあったら知らせろ」(去る)
部下1「何かって何だよ」
部下2「死体が歩いたらだろ」
その後、白旗を揚げている男を見て
部下2「上に知らせろ」
部下1「何て?」
部下2「死体が歩いたって」

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兵士1(銃を向けて)「私が戦争を始めましたって言え」
兵士2「私が戦争を始めました」
その後、銃が相手に渡り、全く同じ事を言わされる

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倒れてる男「ああ糞してぇ」

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国連兵「フランス語は出来ますか?じゃ英語は?」
兵士「ちょっとだけ」
国連兵「これから、中間点に行きます。決して銃は撃たないでください。わかりますか?」
兵士「・・・」
国連兵「バン。ダメ。OK?」

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マスコミ女「これだからフランス人って嫌いよ」

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局「よくやった。出来れば地雷の上の兵士のコメントが欲しいんだ」
マスコミ女「・・・・・ええ。やってみるわ」
局「よし。他の2人のコメントは取れたんだろうな!」
マスコミ女「それが、近寄れなくて」
局「コメントが必要なんだ。いつもで中継をまわす事ができるぞ」
マスコミ女「・・・・・わかった」
局「期待してるぞ」

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ものすごいユーモア感覚。これを作った人は明らかに観客の笑いを狙っていると思います。
だから見ている間は思い切り笑い、その後でゾッとする。それが正しい鑑賞法だと思いました。