エイプリルの七面鳥/★★★★★

この1年でベストワン。
エイプリルの七面鳥 [DVD]
小品ながら評判がよいので借りてみたが、オリヴァー・プラット(父親)が出演しているのをみて秀作であることを予感し、車に一人乗っているパトリシア・クラークソン(母親)の姿をみて傑作であることを確信した。

子供のころから問題ばかり起こし、家族とは断絶状態にあったエイプリルが、母親の余命がわずかと知って、感謝祭にニューヨークのアパートに招待する。料理を作るのはは初めてのエイプリルが七面鳥料理に悪戦苦闘する姿と、遠くから車でやってくる家族の姿が交互に描かれる。

姉に期待せずすぐに「帰ろう」と言い出す妹と写真好きでどこか能天気な弟、ボケているのに突然正気になったりするお婆ちゃんと、なんとか家族をまとめようとする父親(←この人好きだなぁ)。家族には厳しく接するくせに、どこか自分には甘い母親。お互いに近づき過ぎないように気を使いながら、これから起きるであろう"幻滅"や"怒り"、"家族の衝突"という目的地に不安に怯えながら向かっていく。

迎えるエイプリルも、初めての料理に悪戦苦闘。頼りの彼氏は"今日のための大事な用事"のために出かけてしまう。しかも肝心ののオーブンが壊れていて七面鳥を焼くことが出来ない。オーブンを貸してもらうためにアパートの住人たちを訪ねまわるが、これが癖のある住人ばかり。料理にうるさい黒人夫婦や言葉の通じないチャイニーズ家族、最新型のオーブンを自慢するやさ男や菜食主義の女の子など。親切な人もいれば意地の悪い人もいる。どんどん時間ばかりが過ぎていく中で、果たして料理は出来るのか?


全てのキャラクタがこれ以外にないと言うくらいはまっていて、まったく無駄がなく素晴らしい。


監督は「ギルバート・グレイプ」「アバウト・ア・ボーイ」の脚本家のピーター・ヘッジズで、もちろん脚本も担当している。とにかく絶妙なセリフが素晴らしいが、彼への伝言の行き先がどんどん変わるところやラストの処理なども実にうまい。また全編手持ちカメラのドキュメンタリ風の撮影もこの作品に合っている。

どこか壊れている母親役のパトリシア・クラークソンは見事アカデミー助演賞にノミネート!。ただ私としては父親役のオリヴァー・プラットを推したい(「今日がいい日にならなかったどうするの!」「私が殺す」には笑った)
主演のエイプリルは「ギフト」で"なぜそこで脱ぐ!"のケイティ・ホームズ。ただ、本作では素晴らしい演技を見せてくれる。

途中に出てくる料理もおいしそうで、ドラマ自体を豊かなものにしてる。

私が2006年に観たベスト・ワン候補の筆頭になった。小品な佳作ながら傑作!