ピーター・セラーズの愛し方 ライフ・イズ・コメディ! /★★★★

これがピーター・セラーズの生涯!神がかり的な作品。
ピーター・セラーズの愛し方~ライフ・イズ・コメディ! [DVD]

おことわり
私がピーター・セラーズ作品を見たのは3本半だけである。(半というのは「 博士の異常な愛情」が途中で挫折したからである)あとは76年以降の作品(「ピンクパンサー3」、「4」と「チャンス」なので、知らないに等しいかもしれないが、それでもこの映画は興味深かった。
※ちなみに「3」が大のお気に入り、早くレンタル解禁にしてください<その程度か!

メイキングの中で監督が言っているが、まさしくピーター・セラーズ脚本、ピーター・セラーズ監督、ピーター・セラーズ主演でピーター・セラーズの自伝を撮ったらこうなるだろうという作品で、ドラマかとおもったらスタジオのセットだったり、映画だと思ったらそのまま私生活に入ったりと虚と実が入り混じる複雑な構成で、ちょっと「オールザットジャズ」に雰囲気が似ていた。

この作品で、ピーター・セラーズ自身は空っぽだったと言っている。だからこそ色んな人を演じられたと。また子供のまま大人になったとか、満足を知らない母親に育てられたこと、心臓が悪かったこと、美人に弱く女好きで4回も結婚したり、麻薬の常習者であり、怪しげな占い師にだまされていたりなど、奇麗事でない人物像が描かれている。

それにしてもこの映画はすごい。まずピーター・セラーズになりきったジェフリー・ラッシュがすごい。独特のしゃべり方やルックスだけでなく、この映画で一体に変装したのか数え切れないほど多くの人間の形態模写をしながら、ピーター・セラーズという人間を語る。ピーター・セラーズと言う器は他人の目を通したピーター・セラーズでしか語れないと言うのが、この映画のもう1つのメッセージである。
(ちょっと考えるとかなりややこしい。なぜならピーター・セラーズを演じるジェフリー・ラッシュピーター・セラーズとして他人を演じながら、ピーター・セラーズを感じさせるわけだから、かなり高度な演技に挑戦していることがわかるだろう)

その以外にも、クレジットを見るまで気がつかなかったシャーリーズ・セロンや 最初の妻を演じたエミリー・ワトソン、才能がなく嫌味な監督ブレイク・エドワーズ(よくこんなキャラクタを描いたものだ!)を演じたジョン・リスゴー、若い頃のスタンリー・キューブリック(そっくり!)を演じたスタンリー・トゥッチ(「シャル・ウィ・ダンス?」)などが演じている。

この見事な脚本を書いたのはこれが初脚本のクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリー。(原作はロジャー・ルイス)、監督は「プレデター2」「ブローン・アウェイ」「ロスト・イン・スペース 」などしょーもないものばかり撮ってきたスティーヴン・ホプキンス。

ほんとうにピーター・セラーズがあの世から撮らせたんではないだろうか?と思わせるほど神がかり的なものを感じた。

さらに時代を感じさせる挿入曲が素晴らしく、特にオープニングでトム・ジョーンズの「何かいいことないか子猫チャン」に乗せてアニメが始まるところなんか、ホント鳥肌が立ちました。