愛しのローズマリー/★★★★★

とにかく上手い。ヴィグネスの魅力満載
愛しのローズマリー [DVD]
見かけ(=美人)が全てと追っかけまわす男(ハル)が催眠術で「心の美」が容姿として見えるようになり、心がすごく綺麗なのに巨漢の女の子に恋をする(ハルには細身のキュートな美人にしか見えない)。催眠術が解けて相手の正体に気づき、一時は離れるが心の美しさが大事だと気が付いて一件落着となる。
ブス?な女の子が魅力的になっていく話はよくあるが、この映画では出会ったときは超美人(=幻想)なのにエンディングでは巨漢(=現実)になり、しかも観客には魅力的に思わせる離れ業をやってのけた。

とにかく幻想と現実の見せ方がうまい。巨漢のローズマリーもヴィグネスが演じている(特殊メーキャップとファットスーツ)ので素直に共感できるし、綺麗なのに心がブスの女は若い格好をした老婆として見せる。現実のローズマリーの姿は遠景か部分しか見せずクライマックスで初めてじっくり見せるし、細身のローズマリーが繰り広げるデブギャグも間接的な表現で大いに笑わせる。やたらとローズマリーを褒めるところもギャグに転化されており脚本も見事だ。
ファレリー兄弟の作品はこれが初見だが、きわどいネタをぎりぎりのところで見せる手腕と見る側の気持ちを熟知した感覚はとてもに感心した。

ただ、出てくる女の子がものすごいキワモノかスーパーモデルばかりなので、容姿を否定しているわりに容姿にこだわってしまい、不快に思う人もあるとは思う。

そして最大の功労者はやはりヴィグネスだろう。すごくキュートなのに仕草がブスっぽく演じおり、これが現実と幻想のギャップを見事に埋めてくれる。その意味でヴィグネス無しではこの映画は成立しなかったであろう。実際ヴィグネスはメーキャップをしたまま外に出て役を作ったそうだ(DVD特典ではその様子を隠し撮りしたシーンが一瞬出てくる)「だれも目を合わせず話しかけてもくれない。とてもつらく悲しい体験だった」とインタビューでも語っている。その悲しみをキチンと表現しているからこそ見る側が共感できる作品になったと思う。ジャック・ブラックもキャラはあってるので悪くないが、小児科病棟のシーンではせひとも泣かせて欲しかった。

最後に音楽のセンスがよい事とエンディングでスタッフの姿を見せる遊び心が好感度UPとなったことも付け加えておきたい。