トスカーナの贋作(2010)/★★★

不思議と忘れられない
トスカーナの贋作 [DVD]
二人が寄り添うジャケ写真と「公演でトスカーナの村を訪れたイギリス人作家と、現地でギャラリーを経営するフランス人女性が、長年連れ添った夫婦を演じ始め…。」という紹介文だけで観たのですが、ずっと二人芝居のまま夫婦喧嘩を映し出す映画だとは知りませんでした。
いやーまいった。
この二人の関係がかなり曖昧で、観ているうちに「夫婦のふり」をしているのか「本当の夫婦」なのか、それとも「愛人」なのかよくわかりません。映画評には「実は妻と子供は死んでいた」というシックスセンス説も飛び出し(この説結構気に入っています)、この二人の会話に緊張感と興味の持続性を持たせています。

夫婦喧嘩に関しては、妻帯者にはいたたまれない会話の連続で「あるある」どころか、なんで金払って嫌な事思い出させるじゃー!と言いたくなるほどリアルなんですが、私は2人の脇役が気に入ってます。
一人は喫茶店の女主人。「いい旦那じゃないの」と優しくフォローしてくれるめっちゃいい人で、「もっと言え!」と応援しちゃいました。
もう一人は旦那の事を「息子のように思えるから」とアドバイスをくれたオヤジ。
「おたくのカミサンはいろいろ言っているけど、こんな時は謝って肩を抱けば終わる。面倒な事にならないうちにそうしろ」とアドバイスをくれます。事実この後に肩を抱くと奥さんのご機嫌が直って仲直りとなるはずですが、今度は旦那がワインがどうのとぶち壊し。「お前あほか!」と突っ込んじゃいました。

村上春樹の文章に「女の人は何かをして欲しくて怒ってるんじゃない。怒りたくて怒ってるんだ」というのがあったと記憶していますが、女の人と暮らしていくのはなにかと難しいです。

トスカーナの美しいロケーションとともに不思議と忘れられない印象を残す映画でした。