ベスト・キッド(2010)/★★★☆

ウィル・スミスの商売の確かさが光る
ベスト・キッド [Blu-ray]
オリジナルは私の大好きな1本。そのリメイクでしかも先生がジャッキー。
とてもミヤージの代わりにはならないんじゃないの?と思っていましたが・・・。
オリジナルで不満だったファイトシーンは格段に良くなってますね。しかもたっぷりと見せてくれます。
また主役のジェイデン君もキュートで、特に上着拾いが実は大事な修行だった事が分かるシーンのビックリ顔がよかったです。
さらに、ワザと年取った風に見せるジャッキーが意外に渋くて、相手の道場に話をつけに行く場面などは緊張感があって素晴らしいシーンになりました。


それより気になったのはこの企画そのもの。
主人公たちを黒人に変え舞台を中国に移しています。さらに、カンフー、オリンピック、万里の長城紫禁城など中国ネタを盛り込み、27年前は日本人だった師匠を中国俳優の大スターであるジャッキー・チェンに変更。主人公は「幸せのちから」で実績のある息子のヘイデンを抜擢。
さらにあのヒロインの女の子って中国出資者の娘じゃないでしょうか?
全編中国ロケで観光気分も味わえるカンフー映画。オリジナル(「THE KARATE KID」)知名度もありネームバリューも十分。これは大ヒット間違いなしの企画でしょう。
とにかくウィル・スミスの商売を見る目の確かさに驚きました。
興行収入だけでなく主役のギャラもスミス家に入りますし)


ただ、肝心の中身に関してはいい面と悪い面があります。
まず140分はあまりにも長すぎること。観光映画的な側面があるので多少長くなるのは仕方がないけど、もっと刈りこめるはずです。
序盤などはすごくテンポがいいので、なにか切れない事情があったのかもしれません。
あとクレーン撮影が多いですね。これも功罪あると思いますが、山の頂上でコブラと対峙する女の人を横から撮っているのはビックリしました。お金かかってます。
ただし、試合のシーンはちょっと頂けません。
臨場感を出したかったのでしょうが、手持ちカメラがブレすぎて肝心の部分が全然映っていません。中国人のカメラマンなのか、機材が中国製なのか。少なくとも本国で撮っていたらこんな風にはならなかったと思います。
最後の必殺技もトンデモな出来でした。
序盤の公園もそうですが、山頂の場面でもこれ見よがしにやたらと人がいて、観ていてありえねー!と突っ込んでしまいました。


逆によかったのは脚本(クリストファー・マーフィー)。オリジナル(ロバート・マーク・ケイメン)の出来の良さを継承しつつ現代風にうまくアレンジしています。
まず開巻、柱の書き込みを舐めるだけで家族に愛されていたことと父親が亡くなった事が一発で分ります。母親は自動車会社に勤めておりデトロイトから中国に転勤。
出立する日は雨。飛行機で中国語を学習する母親が空港で5番と見上げると標識が漢字。入居したアパートが"ハリウッド"でカード式の電気が分からない。シャワーにはスイッチが付いておりそれに気付かずお湯が出ないと管理人を呼ぶ。言葉の通じない大人たちに迷いながら辿りついた管理人がジャッキー。
この辺りの細やかかさが実にうまい。
いじめっ子に怯える描写(バスの中とか)や反撃して追いかけられる展開もうまいし、道場を見つけて大喜びで中に入ったらいじめっ子が練習していた展開もうまい(これはオリジナルの良さ)
一見関係ない練習が実は修業だったというスジはオリジナルのままですが、前作は家の手伝いだったものが、今回は上着拾い。前作の方が納得度はありましたが本作ではきちんと修行の場面があるのでプラマイ0という感じ。

唯一不満なのは、前作で出てきた「コブラ会」が本作ではただの道場となっている点。「イエス! センセイ!」は80年代の合言葉でございました。