縞模様のパジャマの少年(2009)/★★★★

文科省推薦にすべき
縞模様のパジャマの少年 [DVD]
予告編をみて大体の展開は判るものの、この話にどうやって決着を付けるのかと思ったら、こうくるかとビックリしました。
ただ、見ていてずっと違和感が付きまとったのも確か。
それは何かを考えると2つの点に行き当たります。


1つは画面がきれい過ぎること。1940年代を再現するにはあまりにもきれい過ぎる。セットや衣装、小道具にいたるまで丁寧に考証されているのに、肝心の照明がきれい過ぎ(現代過ぎ)て「あの時代」を表すにはふさわしくないように思えるのです。(同時代ものの「ヒットラーの偽札」「善人のためのソナタ」などと比べてみてください)
これが、終始違和感として付きまといます。
(実際DVD特典のメイキングではあえて現代的な照明にしたと撮影監督が語っています)


2つ目は母親が秘密を知って病んでいってしまうこと。
裏の収容所はタダの収容所でないことに気がついてから段々病んでいく様子が描かれますが、それよりは見てみぬ振りをするほうがずっと怖いし、より本作のテーマに近いと思います。
半ば無意識に無視して「裏庭は臭いわ」とか「ここは素敵だけど木曜日は窓が開けられないのが問題ね」ぐらいのセリフを言わせてもいい。
あるいは、夫を信じて全く疑わないという選択肢もあったし、実際メイキングでは本当に知らなかった人たちの方がずっと多かったと語っています。
さらに同僚の奥さんは秘密を知っているが、この母親が知らないことに気がついて話を合わせるなどのエビソードがあった方がより鮮明になったと思います。


物語が8歳の子供の目線で語られており、それが実に生き生きと描かれていることと合わせて考えると、実はこの映画は未来の子供達に向けて作られているのではないかと思い当たります。
小中学校の体育館に集めて見せる様な映画。極端な描写は避け、子供に感情移入させることに苦心し、極力登場人物を減らしてわずか95分という尺で見せる。
そう考えると、現代の子供に見やすい画面(照明)であったり、はっきりと施設に反対する母親の存在は子供達に理解させる重要な要素に思えるのです。
さらに言うならドイツ語でなく英語であるのも製作国のイギリス向けであったり、より多くの子供達に見るチャンスを与えるための選択肢として取れないこともありません。


日本でこれを「文科省推薦」とするのは難しいと思いますが、実際、中学時代に訳もわからず「ジョニーは戦場に行った」を見せられ人間芋虫が強烈なトラウマになった身としては、暗い体育館に子供達を集めて、息を凝らして見せる。そしてラストのインパクトは一生忘れられない体験になると思うのです。
これぞ本物の教育映画だと思いますけど。