トゥルーマン・ショー(1998)/★★★★☆

優秀なスタッフとキャストが作り上げた一級のファンタジー
トゥルーマン・ショー(通常版) [DVD]
TSUTAYAのキャンペーンで見かけてつい購入。時々見たくなります。


今回観直してあらためて脚本の素晴らしさを痛感。
安易なネタばらしをせず、前半はトゥーマンの様子を描き、途中から番組回想シーンとしてじわじわとこの映画の仕掛けを見せる。
(早い段階で亡くなったはずの父親を見せるのにその説明は随分と後だ)
終盤はトゥーマンが気づいた事を観客にも知らせず、製作者(エド・ハリス側)からの視点でドラマが加速する。
こういった構成を取るのはずぶんと勇気がいると思うが、それが見事に成功していると思う。
脚本は「ガタカ」「シモーヌ」「ターミナル」「ロード・オブ・ウォー」と特異なシチュエーション設定から人間を浮き彫りにするテーマをずっと追求しているアンドリュー・ニコル


監督のピーター・ウィアーは「刑事ジョン・ブック/目撃者」で注目され、「いまを生きる」や本作がヒットしたが、これ以降はなぜかとんど撮っていない
(「マスター・アンド・コマンダー(2003)」1作のみ)
随所に定点カメラを意識した様々なレンズと不自然なアングルのショットが差し挟まれ、見ているだけで楽しいが、”鉛筆削りの見た目”には大笑いした。
”仮想の世界”(番組のセット)としての街も雰囲気がよく出ていて、”作られた街””作られた人々”など、普通の風景なのにどこかCMぽいという微妙な空気がとてもよく出ている。


最初に見たときに激しく嫌悪した妻役のローラ・リニー
役者として結婚までする役だが、本作で一番笑えるのが、ジム・キャリーに問い詰められ顔が引きつりながらもココアの紹介をする場面は本当にうまい。
ずっとナースキャップをしているのもおかしい。
ミスティック・リバー」「イカとクジラ」など作品を選ぶ目も確かで、「ルイーズに訪れた恋は…」では主役もしている。


男友達役といえばこの人ノア・エメリッヒ
オーロラの彼方へ」「リトル・チルドレン」など親友役ばっかりなのが残念だが、本作では役者として親友役を演じているという難しい役をこなしている。
(前半と後半では見え方が全く違うのがすばらしい)


主人公にずっと想われるというおいしい役を演じたのはナターシャ・マケルホーン
一度見たら忘れられない眉毛が災いしてか、思ったよりは主演作が少ない。
ソラリス」「ラヴェンダーの咲く庭で」ぐらいか。


「マスク」でブレークしたが、本作で本格的に人気を得たのがジム・キャリー
くどい演技もキャラとして確立すると本作のように純真無垢な男として映える。
これ以降も主演作が次々と公開されたが、最近は演技派としてキャリアを積むことに熱心になったのか、見ることが少なくなった。
(「イエスマン “YES”は人生のパスワード」は久しぶりのジム・キャリー節が炸裂しているようですごく楽しみ)


もう1つだけ特筆したいのが音楽。
ブルクハルト・ダルウィッツという聞きなれない人とフィリップ・グラスが担当。
ラストの感動的な音楽はもっと評価されてもいいと思う。


こうしてみると、派手な作品ではないものの優秀なスタッフやキャストが集まり作り上げた佳作だと思う。
ちなみに似たような話として「エドTV」があるが、本作は「ファンタジー」として扱っているので、全然別の作品と言える。

私としてはこちらの方が好きだ。