幸せのちから(2007)/★★★★☆

黒人版「クレイマー・クレイマー」。いい作品でした。
幸せのちから コレクターズ・エディション [DVD]
ウィル・スミス製だからと侮ってはいけない作品だと思いました。
よく出来た脚本、抑制の効いた演出、親子競演の見事なアンサンブル。
"ウィル・スミス"という色眼鏡をはずしてみれば、黒人版「クレイマー・クレイマー」として十分に心に沁みる佳作になっていると思います。


ところで、"急にあの商品が売れるのはおかしい"とか、"そんなに能力があるなら、なぜ貧乏した"などという意見を目にしましたが、すべては"子供"が鍵になっているのだと思います。
人より早く帰らなきゃいけないから、仕事の仕方も変える。男一人だったらどこでも寝られるのでしょうが、子供がいたらそうも行かない。また、成功をつかむきっかけも子供でした。
一見、荷物のように思えるけど、実は「幸せのちから」は息子だった。それがこの映画のメッセージだと思いました。


また、ラストがあっさりしすぎという意見がありますが、製作者としては、この逆境を親子で乗り越えたことが大事なのであって、その後の成功にはあまり重きを置いていないのではないでしょうか?
こういった親子物(「アイ・アム・サム」「HIRO/靴をなくした天使」)で時々そういう意見を目にしますが、おそらく若い方の意見ではないかなと思います。
人生に安定なんてないし、ましてや絶対の成功なんてあり得ません。ただこういった経験をすることによって、まだどん底に落ちても這い上がることが出来る自信と家族との絆があるだけだと思います。
ラストシーンにあるのは、ずっと持ってたあの機械の消失と、相変わらずくだらない子供との会話。それで十分だと思います。(いや、本当は母親がいればもっと良かったと思いますが、それでは映画にならないので・・・)


この素晴らしい脚本を書いたのはスティーヴ・コンラッド。とにかくシチュエーションを作るのが上手くて、この映画の成功の80%はこの脚本だと思います。また監督はイタリアのガブリエレ・ムッチーノ。ドキュメンタリの手法を用いた、抑制が効いたいい演出でした。
でも最大の功労者はプロデューサーでもあるウィル・スミスだと思います。
その意味で「最後の恋のはじめ方」は未見ですが、自身がプロデュースする映画はよく考えられた秀作が多いという印象があります。
ウィル、侮れません。